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海外送金を支えるロシアのウクライナ侵攻でも注目される「SWIFT」とは?


インターネット決済サービスのStripeで働くパトリック・ミッケンジー氏が、海外電子送金の仕組みについて解説しています。ミッケンジー氏が海外電子送金の仕組みを解説した理由は、ロシアによるウクライナ侵攻がきっかけで大きな注目を集めた、国際決済システムの一部である「SWIFT」について解説するためです。

Moving money internationally
https://bam.kalzumeus.com/archive/moving-money-internationally/

ある銀行口座から別の銀行口座に資金を振り込む場合、一見資金が口座間を移動しているように思えますが、実際には一連のやり取りを調整するための仲介システムとして内国為替制度を利用しています。内国為替制度では銀行間の決済が自国の中央銀行に開設した口座間での資金の振り替えにより成り立っているため、口座から口座への送金時に実際に資金が移動しているわけではないというわけ。

海外電子送金も同じようなシステムにより成り立っていますが、ミッケンジー氏は「興味深い違いがひとつある」と指摘。海外電子送金では、内国為替取引における中央銀行が存在しないため、銀行が海外の別の銀行に口座を開設し合う必要があります。この口座を「コルレス口座」と呼び、これを使って資金を振り替えることで、海外電子送金は成り立つわけです。この海外電子送金における中継地点となる銀行を、コルレス銀行と呼びます。

例えば、金融危機の少し前に日本の岐阜県にある小さな金融機関で働いていたアメリカ人が、学生ローンの支払いを行ったことがあるそうです。この場合、岐阜県の小さな金融機関にアメリカ人が保有する口座から、日本最大級の銀行である三菱UFJ銀行に送金指示が飛び、さらに、三菱UFJ銀行からアメリカのワコビアという銀行に送金指示が移動。その後、ワコビアがFedWireを使い、連邦準備制度を経由してバンク・オブ・アメリカに学生ローンを支払うという流れが発生したそうです。この場合、ワコビアがコルレス銀行として機能したということになり、電子送金の中継点となった各銀行およびサービスは、送金に対して手数料を請求することが可能となります。


SWIFTは国際銀行間通信協会(SWIFT)という同名の団体が提供する決済ネットワークシステムで、コルレス口座における支払い命令を安全にやり取りするためのメッセージシステムです。SWIFT上でやり取りされる取引件数は1秒間に160件にものぼるとミッケンジー氏は指摘しています。

SWIFTは国際電信取引とほぼ同義として扱われており、その理由は銀行とその取引相手が電子送金を利用する際に相互運用する主要なシステムだからです。具体的には、MT103と呼ばれるメッセージを送信し、各銀行が内部の帳簿やその他の銀行システムを操作して、メッセージにコード化された要求、つまり支払いを実行することになるというわけ。

SWIFTの利用者が増えれば増えるほど、SWIFTを利用することで取引できる銀行の数が増える、つまり「別の国際決済システムを利用するよりもSWIFTを利用する利点が高まる」ということになります。そのため、SWIFTの運用期間が長くなればなるほど運用利点が高まっていくため、「SWIFTの価値は高まっていく」とミッケンジー氏。


重要なのは「SWIFTは国際的な資金移動と共存しているわけではない」という点です。そもそも、SWIFTは実際の資金移動に直接的には関係しておらず、SWIFT上を資金が移動するわけではありません。また、SWIFTは決済関連のメッセージを独占しているわけでもなく、ある銀行には「SWIFTのサービスがダウンした際に海外の銀行に送金するための手ほどき」が用意されているとのこと。

なお、ロシアのウクライナ侵攻を受け、SWIFTはロシアの一部の銀行をネットワーク上から切り離すと発表しています。この措置は「ロシア政府に近しい銀行に制裁を加えながら、ロシア企業が国際取引できないようにすることで、ロシア内外の人道的危機を防ぐことが目的と思われます」とミッケンジー氏は記しています。

ロシア7銀行をSWIFTから排除 EU決定、最大手は対象外: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB289100Y2A220C2000000/

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in メモ, Posted by logu_ii

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