昆布ゼロなのに「コンブチャ」と呼ばれる謎の発酵ドリンクの原料「SCOBY」で持続可能な浄水器を作ることができる
by Jason
欧米で人気のドリンク「Kombucha(コンブチャ)」は、その名から昆布を連想しますが、実は昆布とは無関係のドリンク。日本では「紅茶キノコ」として知られるコンブチャは、紅茶あるいは緑茶に砂糖を加え、培地で栽培されたキノコっぽいゲル状の塊を漬け込むことで発酵させた飲料です。「SCOBY(Symbiotic Culture of Bacteria and Yeast:バクテリアと酵母の共生培養)」と呼ばれるこの塊を、市販の浄水フィルターより効果的なバイオフィルターにすることに成功したとの研究結果が発表されました。
Kombucha cultures make excellent sustainable water filters, study finds | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2022/01/kombucha-cultures-make-excellent-sustainable-water-filters-study-finds/
コンブチャは日本ではあまり知られていませんが、2020年にはアサヒ飲料からも登場しました。見た目や味・香りについては以下の記事から読むことができます。
昆布ゼロなのに「コンブチャ」と呼ばれる謎の発酵ドリンク「KOMBUCHA(コン・ブチャ)」が数量限定・ファミマ限定で登場したので飲んでみた - GIGAZINE
モンタナ工科大学とアリゾナ州立大学は新たな研究で、このコンブチャの原料を使って、市販のフィルターよりも水のろ過効果が高いフィルターを作れることを示しました。
コンブチャは通常、バクテリアと酵母を培養したセルロース繊維の培地「SCOBY」を使って作られます。
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SCOBYは新たな生体材料としても注目されています。例えば、2021年にはマサチューセッツ工科大学(MIT)とインペリアルカレッジロンドンの研究者が、SCOBYから生体センサーとして利用可能な生体構成物質を開発しました。
MITとインペリアルカレッジロンドンの研究チームは、生体材料の作成において、野生の酵母ではなく、実験室で育てられた醸造用酵母「サッカロマイセス・セレビシエ」を利用。サッカロマイセス・セレビシエをコマガタエイバクター・レティクスというバクテリアと共に培養することで、SCOBYの「親」を作成したとのことです。そして、酵母の細胞を操作して、汚染物質であるエストラジオールや生物発光たんぱく質であるルシフェラーゼなどを検知、分解させることに成功しました。このほか、菌株を交換することで、さまざまな機能特性を持たせることが可能だと研究チームは示しました。
今回、モンタナ工科大学とアリゾナ州立大学が発表した新たな研究結果は、上記の研究に続くもの。世界では汚染された飲料水によって多くの子どもたちが死亡しています。バクテリアや寄生虫、ウイルスを除去するためのフィルターは市販されていますが、これらのフィルターは最終的に目詰まりによって水をろ過できない状態になってしまいます。このため目詰まりの原因となる、油・粘土・ミネラル・バクテリアの付着を防ぐフィルター開発が急がれています。そして目詰まりの原因となる「バクテリアの増殖」を防ぐための方法として、SCOBYを使ったフィルターが考案されたわけです。
SCOBYのフィルターと市販のフィルターを比較したところ、いずれのフィルターも時間の経過と共に目詰まりを起こしました。しかし、実験で使用されたSCOBYのフィルターは、市販のフィルターより19〜40%も優れたパフォーマンスを記録したとのこと。またSCOBYのフィルターは汚れに強く、最終的に目詰まりを起こしたものの、繁殖した細菌の数が市販のフィルターより少なかったそうです。
実験においてSCOBYで繁殖されたのは、コンブチャに多く含まれるアセトバクター属です。アセトバクター属は食酢の製造に用いられるもので、抗菌特性を持つことで知られています。研究チームは、この特性によりSCOBYのフィルターがバクテリアの増殖を防いだものとみています。
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