サイエンス

40歳以上の成人の99%はMRIで肩に「異常」が見られる


「肩が痛い」「腕が上がりにくい」といった症状を訴えて病院でMRI検査を受けると「肩に異常がある」と言われることがあります。ところがフィンランドの一般の人たちを対象にした研究により、40歳を過ぎた成人の約99%でMRIに何らかの「異常所見」が見つかる一方で、痛みや動かしにくさなどの症状との結びつきは弱いことが判明しました。

Incidental Rotator Cuff Abnormalities on Magnetic Resonance Imaging | Less is More | JAMA Internal Medicine | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2844659


フィンランド・ヘルシンキ大学のトーマス・イボウニグ氏、テッポ・L・N・ヤルヴィネン氏を中心とする研究チームが注目したのは、肩の骨を安定させながら腕を動かすための筋肉と(けん)の束である「回旋筋腱板」と呼ばれる部分です。この回旋筋腱板がすり減ったり傷ついたりすると肩の痛みの原因になると考えられてきました。そのため医師は肩の痛みを調べるためにMRIで回旋筋腱板を撮影し、MRI画像に写った変化をもとに診断や治療方針を決めることがあります。

研究チームは「そもそも40歳を過ぎると症状がなくても回旋筋腱板には何らかの変化が写るのではないか」という点を明らかにするため、一般の人を対象とした調査を実施。フィンランドの健康調査コホートから41歳~76歳の成人602人を無作為に選び、問診や質問票、医師による肩のテストを行った上で両肩を3テスラMRIで撮影しました。3テスラMRIは磁場の強さが3テスラのMRI装置で、一般的な1.5テスラMRIよりも腱や筋肉などの細かな変化を捉えやすいとされています。

撮影したMRI画像を分析した結果、回旋筋腱板に「変化がある」と判定された人は602人中595人で、割合にすると98.7%だったと研究チームは報告しています。判定は大きく「腱の変化(腱症)」「部分断裂」「完全断裂」に分けられ、それぞれの割合は腱症が25.3%、部分断裂が62.4%、完全断裂が11.1%だったとのこと。

以下のグラフは年齢層ごとに回旋筋腱板が「正常」「腱症」「部分断裂」「完全断裂」のどれに分類されたかを女性と男性に分けて示したもので、年齢が上がるほど「正常」の割合が減り、「腱症」や「部分断裂」が増えていくことが分かります。また、「完全断裂」は若年層ではほとんど見られない一方で高齢になるにつれて増える傾向があり、回旋筋腱板の所見が加齢とともに進行しやすいことを示しています。


「MRIで異常が見つかるならそれが痛みの原因なのでは?」と思いがちですが、研究チームは症状と痛みの対応関係を検証するため、「直近1週間に痛み、または肩の機能障害があるか」を基準として、対象者602人の両肩を合わせた1204肩を「症状がある肩」と「症状がない肩」に分けて比較しました。

その結果、MRI画像で回旋筋腱板に何らかの所見が見つかった割合は「症状がある肩」で98%、「症状がない肩」で96%とほとんど差がなく「MRIでは痛みのない肩でも異常が写ることがわかった」と研究チームは報告しています。


また、「完全断裂」の所見だけを見ると「症状のない肩」が6.5%なのに対して「症状のある肩」は14.6%で「症状がある肩」の割合が高くなったそうですが、年齢や他の画像所見、臨床テストの結果などを踏まえて調整した結果その差は小さくなったとのことです。

これらの分析結果から、研究チームは外傷がきっかけではない肩の痛みに対して「MRIで見つかった回旋筋腱板の所見をそのまま痛みの原因だとみなして診断や治療方針を決めることには慎重であるべきだ」と主張しています。痛みがある人でも痛みがない人でもMRIで所見が見つかる割合がほぼ同じだったことから、「MRI画像に写った変化から症状と関係のある所見とたまたま写った所見を区別するのは難しい」と研究チームは結論づけています。

また、研究チームはこれらの所見を「異常」と呼んでいるものの、多くは診断や治療方針に直結する変化というよりも正常な加齢による変化を反映している可能性が高いと指摘。患者への説明では外傷や治療の必要性を連想させる「断裂」のような強い言葉を多用せず、「病変」「欠損」「ほつれ」「構造変化」「変性」などの、より正確で「治療が必要」という印象の薄い用語を使うことで、患者の不安や「何かしなければ」という認識を和らげられる可能性があると研究チームは述べています。

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in サイエンス, Posted by log1b_ok

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