Amazonはなんとコンテナを自作し海上流通の大混乱を回避していた、その綿密な戦略の全貌に迫る
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴いショッピングサイトの利用が増加したことで、アメリカ・カリフォルニア州の港では船舶やコンテナが大混乱し、流通が数週間単位で遅れるという事態に陥っています。そんな中スムーズな配送を実現しているAmazonは、一体どのような方法を取っているのか、ニュース放送局のCNBCが迫っています。
How Amazon beats supply chain chaos with ships and long-haul planes
https://www.cnbc.com/2021/12/04/how-amazon-beats-supply-chain-chaos-with-ships-and-long-haul-planes.html
アメリカ・カリフォルニア州のロサンゼルス港とロングビーチ港では、入港待ちになっているコンテナ船が過去最多となり、流通が滞る原因となっています。これはCOVID-19のパンデミックにより外食や旅行への人々の支出が減った一方で、電化製品などの支出が増加したためだとみられています。
流通が混乱し、製品の到着遅れが発生する中で、「翌日配達」といった迅速な配達を実現し続けているのがAmazonです。Amazonはこれまでできる限り多くの製品を配送するために投資を続けてきました。2019年にはAmazonが配送に当てるコストは380億ドル(約4兆3000億円)でしたが、2021年にはそのコストが610億ドル(約6兆9000億円)に増加。またコンサルティング企業のSJ Consulting Groupによると、Amazonが扱う荷物のうち、サードパーティーを経由せずAmazonから配送される荷物は2019年の47%から大きく増加し72%に上っているそうです。
Amazonの配送戦略の1つは、「中国で独自の貨物コンテナを製造する」ということにあります。配送遅れの原因として世界的なコンテナ不足が指摘されており、コンテナ価格はパンデミック前の10倍にあたる2万ドル(約230万円)にまで上昇しています。
世界的な「コンテナ不足」が発生中、コンテナは一体どこに行ってしまったのか? - GIGAZINE
Amazonは過去2年間で5000~1万個のコンテナを中国で製造し、アメリカへと持ち込んだとのこと。2021年10月5日には、Amazonのコンテナを大量に積んだ貨物船Star Lygraがテキサス州・ヒューストンに到着したことがわかっています。
これがAmazonの自作コンテナ。
Amazonは2015年には独自の海上貨物事業について調査していたとみられています。そして2017年にAmazonは、中国でフルフィルメント by Amazonを広めるため、中国の子会社を通じてグローバルな貨物輸送業を開始しました。もともと貨物輸送業の船舶は材木・貨物・穀物・農産物を運ぶための多目的船でしたが、コンテナ不足や流通の悪化を受けて、Amazonはこれをコンテナ船として利用しだしたそうです。
Amazonは利益率の高い製品の配送について、ボーイング777といった航空機をリースして中国からアメリカへの配送に利用しているとも伝えられています。また民間の貨物船をチャーターし、混雑しているロサンゼルスではなくワシントンの港に荷物を運び、そこからトラックでロサンゼルスに荷物を運ぶという形を取っているそうです。
荷物を積み下ろししている様子はこんな感じ。
加えて、労働者不足も世界的に物流の大きな問題となっていますが、Amazonは人的資源を確保するために2021年に雇用している季節労働者全員に最大3000ドル(約34万円)のサインオンボーナス(入社時一時金)を提供しています。なお、2021年の従業員は2020年に比べて5万人増加しているとのことです。
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