サイエンス

なぜ関節炎は同じ場所で繰り返し起きやすいのか?


関節リウマチやその関連疾患の症状の1つに、関節で腫れや痛みを生じる「関節炎」があります。そして、例えば右膝から始まった関節炎は、たとえ何年も寛解の状態が続いたとしても、やはり同じ右膝から再度炎症を起こす可能性が高いといわれています。なぜ関節炎が同じ場所で再発しやすいのかに関する新たな研究を、ボストン小児病院とブリガム&ウィメンズ病院の共同研究チームが発表しました。

Arthritis flares mediated by tissue-resident memory T cells in the joint: Cell Reports
https://www.cell.com/cell-reports/fulltext/S2211-1247(21)01372-3


Thanks to Mice, We May Know Why Arthritis Keeps Flaring Up in The Same Joints
https://www.sciencealert.com/immune-system-memory-might-explain-why-arthritis-flares-up-the-same-joints-twice

ボストン小児病院の免疫科長であるピーター・ニグロヴィッチ氏は「関節炎は圧倒的に以前から患っていた関節で起こります。その関節に含まれる何かが『この関節は以前に炎症を起こした関節だ』と記憶しているようなのです」と述べています。


ニグロヴィッチ氏はこの炎症を起こした記憶が関節の内側にある滑膜に存在する免疫細胞「メモリーT細胞」に眠っているのではないかと考えました。ニグロヴィッチ氏によれば、メモリーT細胞は関節炎がおさまった後も関節に存在し、炎症再発のきっかけになるとのこと。実は皮膚の乾癬(かんせん)や過敏症なども、メモリーT細胞によって同じ場所で再発しやすいことがわかっており、ニグロヴィッチ氏はこの皮膚の炎症と同じ理屈が関節にも言えるのではないかと考えたわけです。

ニグロヴィッチ氏の率いる研究チームは、マウスが炎症性関節炎を患うモデルを3つ示しました。そのうち2つのモデルでは化学物質が、3つ目のモデルでは炎症誘発性サイトカインをブロックするタンパク質の遺伝的欠損がきっかけになっていました。

そして、いずれのモデルでも炎症が起こると、関節に常駐しているメモリーT細胞が他の免疫細胞を結集し、それ以降は特定の関節に限定して関節炎が引き起こされることが確認されました。そして、このメモリーT細胞を除去することで、関節炎の再発が抑制されることがわかりました。つまり、メモリーT細胞によって炎症の場所が記憶されていたというわけです。


ニグロヴィッチ氏は「現在、関節リウマチの治療は、生涯にわたって続けなければなりません。多くの患者で症状を抑えることに成功していますが、治療法はありません。今回の発見は新たな治療の道を開くものと考えています」と述べています。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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