人間の体温が過去200年間で低下しているのは「身体活動の減少」が理由との指摘
約200年前に記録された人間の平均体温と比較して、現代の人間の体温は男性で0.59度、女性は約100年前と比較して0.32度低いことが研究により明らかになっています。研究者らは、この体温低下の謎が「身体活動の減少にあるのでは」と指摘しています。
Historical body temperature records as a population-level ‘thermometer’ of physical activity in the United States - ScienceDirect
https://doi.org/10.1016/j.cub.2021.09.014
Progress doesn’t always mean movement, says Harvard study of daily exercise – Harvard Gazette
https://news.harvard.edu/gazette/story/2021/10/progress-doesnt-always-mean-movement-says-harvard-study-of-daily-exercise/
2020年1月、1860年代の南北戦争時代における人間の平均体温と、1970年代から始められたアメリカ国民健康調査から得られた結果を比較した研究が発表されました。この中で人間の平均体温が低下していることが示され、研究者らは「現代医学の台頭により、体温上昇を引き起こす慢性感染症が減少したことが原因ではないか」と推測していました。
人間の体温は1800年代から低下していることが判明、その理由とは? - GIGAZINE
さらに2020年後半、ボリビアのへき地に住む先住民族を調査した結果、平均体温がわずか16年で0.5度も低下していることが判明。体温低下はアメリカ人特有の現象ではなく、また明らかに衛生状態や医療の改善が原因ではないために、さらなる調査が必要であることが示されました。
ハーバード大学のAndrew Yegian氏らは、平均体温の低下は代謝の低下、つまり身体活動の低下が原因だという仮説を立てて調査を開始。現代で広く用いられる身体活動の記録方法は100年前には行われていなかったために、Yegian氏らは身体活動・代謝・体温の変化をモデル化して、身体活動と体温の関連性を分析しました。
Yegian氏らの計算によると、1820年代以降、男性の代謝率が約6%低下していることが判明。これは75kgの男性が1日27分の軽いランニングを行った時と同等の数値であったことから、Yegian氏らは「現代の人間は、200年前と比較して平均身体活動時間が約30分低下しており、このことが体温低下に影響を及ぼした可能性がある」と結論付けています。
Yegian氏らは「健康状態の改善により体温調節の必要性が昔と比べて低くなった可能性があります。身体活動は健康状態の主要な決定要因であり、過去数世代で人間の身体活動がどれだけ低下したかを理解することは、心臓病やアルツハイマー病などの慢性疾患の発生率の増加が身体活動とどう関連するのかを理解することに役立ちます」と述べました。
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