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新型コロナやインフルエンザウイルスに感染しても多くの人が生き残る理由とは?


新型コロナウイルス感染症やインフルエンザなど死に至る可能性のある感染症は多く存在しますが、人間は免疫システムによって保護されているため、感染症を患った全ての人が死亡するわけではありません。そんな免疫システムについて、教育系YouTubeチャンネル・Kurzgesagtが「なぜ免疫システムが多くの病原体に対応することができるのか」を解説しています。

You Are Immune Against Every Disease - YouTube


人間が増殖するには、「精子を卵子に受精させ、受精卵が分裂し、体細胞が増殖して新生児として生まれる」というプロセスが必要で、このプロセスには何カ月もの時間がかかります。


さらに、新生児が増殖可能な年齢になるまでには何年もの時間が必要です。


これに対して、細菌は自分のコピーを作成して約30分で増殖可能。また、ウイルスは数時間以内に数百、数日以内に数十億のコピーを生み出すことができます。


このため、細菌やウイルスは体内で急速に増殖して変異を繰り返します。このような特徴から、人体が細菌やウイルスに対抗するのは困難に思えます。


人間の免疫系は、上述のような急速に変異する膨大な種類の病原体に対抗する能力を持っています。Kurzgesagtによると、免疫系は脳に次いで2番目に複雑な生物学的システムとのこと。


免疫系には、生まれながらにして持っている「自然免疫」と、成長していく過程で後天的に獲得する「獲得免疫」の2種類が存在します。自然免疫系には好中球マクロファージ補体樹状細胞などの免疫細胞やタンパク質が含まれており、幅広い外敵に対応ですが、能力は比較的低め。それに対して、獲得免疫系では外敵ごとに異なる免疫細胞が応答するため、外敵に対して強力な対処が可能です。


この獲得免疫による免疫応答は、免疫系が過去に侵入してきた外敵を記憶していることによって実現されています。


Kurzgesagtは、免疫系が外敵を記憶している仕組みを次のように解説しています。まず、細菌やウイルスといった外敵は、タンパク質の組み合わせによって構成されています。


そして、免疫細胞は受容体で周囲のタンパク質を認識して、そのタンパク質を攻撃するべきか否かを確かめます。


この時、免疫系が記憶しているタンパク質ならば「攻撃するべきか否か」を判断できますが、記憶していないタンパク質の場合は、正常な判断ができません。そのため、免疫系はできるだけ多くのタンパク質を記憶しておく必要があります。


しかし、タンパク質は3Dパズルのピースのように組み合わさっており、世界中に数十億通りの組み合わせのタンパク質が存在しています。加えて上述の通り細菌やウイルスは急速に変異するため、全てのタンパク質を記憶するというのは不可能に思えます。


この問題を解決するために、免疫細胞は少ない遺伝情報をさまざまな組み合わせで結合させることで、多くのタンパク質情報を得ています。


Kurzgesagtは、この「遺伝子を組み合わせる方法」を「100種類の食材があれば数十億通りのレシピを作れるようなもの」と説明しています。


この方法によって、免疫細胞は少ない遺伝情報から……


何通りものタンパク質情報を生成し、それに対応する免疫細胞を生み出しているというわけです。


しかし、このように遺伝情報を組み合わせて何通りものタンパク質情報を生成すると、人体の一部のタンパク質を生成し、それを「外敵」と認識してしまう可能性があります。


そのような事態を防ぐために、人体では胸腺と呼ばれる手羽先ほどのサイズの器官で免疫細胞を選別しています。


上述の方法で生み出された免疫細胞は胸腺の選別システムを通り……


生存に必要なタンパク質に反応してしまう免疫細胞は胸腺で分解されます。


Kurzgesagtによると、胸腺の選別を生き残る免疫細胞は全体の2%しか存在しないとのこと。このことからKurzgesagtは胸腺を「厳しい選抜が行われる大学」と表現しています。


このように、獲得免疫系で多くのタンパク質に対応する免疫細胞が生み出され、そのうち人体に影響を与えない免疫細胞だけが免疫系に残るため、人体は多くの病原体に対する抵抗力を確保できているというわけです。


しかし、本当に上述の通りに免疫系がうまく働いているのならば、新型コロナウイルス感染症で何百万人もの人が亡くなる事態は発生しなかったはずです。


Kurzgesagtは「免疫は非常に複雑なシステムで、病原体も免疫をだますような仕組みを持っています。それらの仕組みはこのムービーでは語りきれません」と述べ、免疫について詳しく知りたい場合はKurzgesagtのフィリップ・デットマーCEOが記した書籍「IMMUNE(免疫)」を読むように推奨しています。


なお、ムービー内で紹介されている書籍「IMMUNE」は、記事作成時点ではAmazon.co.jpでKindle版が税込2132円、ハードカバー版が税込4171円で販売されています。

Amazon.co.jp: Immune: The new book from Kurzgesagt - a gorgeously illustrated deep dive into the immune system (English Edition) 電子書籍: Dettmer, Philipp: 洋書

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in 生き物,   動画, Posted by log1o_hf

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