長年ADHDと関連付けられてきた脳の発達の遅れが単なる性差である可能性が示される

子どもがなぜ注意欠如・多動症(ADHD)を発症するのか、その原因ははっきり分かっていません。主要な仮説の1つは「脳の大脳皮質の成熟が遅れることによって引き起こされる」というものですが、この説に異議を唱える研究結果が公表されました。
Attention problems and cortical maturation in a large longitudinal sample of youths: The importance of accounting for sex differences | PNAS
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2605729123
Case of mistaken patterns: Slow brain development linked to ADHD for years might just be sex differences
https://medicalxpress.com/news/2026-05-case-mistaken-patterns-brain-linked.html
バーモント大学のシャノン・D・オコナー氏らが発表した研究内容は、「ADHDと大脳皮質を関連付けるこれまでの研究が、男女間における正常な発達の違いをADHDに関連する発達の遅れと誤って解釈していた可能性がある」というものです。
ADHDと大脳皮質を関連付けた研究としては2007年のフィリップ・ショー氏らのものが有名です。ショー氏らはADHDの子ども223人を対象に調査を行い、注意力、意思決定、自己制御に関わる脳の領域が、ADHDの子どもではADHDのない同年代の子どもよりも数年遅れて成熟するように見えることを示しました。この研究はその後長年にわたり科学者たちのADHDに対する見方を形作りました。
この研究以後、脳画像技術は飛躍的に進歩し、科学者たちはこれまで以上に鮮明かつ詳細に脳を観察できるようになりました。こうした高度な技術を利用できるようになったことから、オコナー氏らはさらに大きなサンプル数を用いてADHDと脳の発達との関連を改めて検証することにしました。

研究チームは、一般公開されているAdolescent Brain Cognitive Development(青少年脳認知発達)研究を通じ、男児5782人と女児5311人から収集された計2万6496件の脳画像を調査しました。また、保護者が子どもの注意に関する問題を評価したアンケート「Child Behavior Checklist」も使用しました。
その後、研究者らはMRI画像を用い、大脳皮質と呼ばれる脳の最外層の厚さを測定し、子どもの成長に伴って皮質が自然に薄くなる過程を追跡しました。このデータをコンピューターモデルに入力し、注意に関するスコアと皮質が薄くなる速度との関連を調べました。
その結果、男児の脳は女児よりも自然に薄くなる速度が遅いことが分かりました。一般的にADHDと診断されるのは男児の方が多いため、これまでの研究では皮質が薄くなる速度の遅さをADHDそのものの兆候と誤って解釈していた可能性があります。男女間の生物学的な違いを適切に考慮すると、注意に関する問題と脳の発達との間にあると考えられていた関連性は完全に消失したとのことです。
さらにオコナー氏らがADHDの遺伝的リスクが高い子どもの脳画像を解析したところ、一部の子どもは皮質が薄くなる速度がむしろ速くなっていることが分かりました。
これらの結果を踏まえ、オコナー氏らは、「男女間の脳発達の違いを慎重に考慮しない限り、大脳皮質の成熟パターンを注意に関する障害の指標として扱うべきではありません」と指摘しました。

コペンハーゲン大学のソーニャ・ラビアンカ氏らが公開した別の研究では、以前に比べてADHDまたは自閉スペクトラム症(ASD)の遺伝的リスクが低下しているにもかかわらず、症例数が増加していることが示されています。
Changes in Genetic Contributions to ASD and ADHD by Year of Diagnosis | Attention Deficit/Hyperactivity Disorders | JAMA Psychiatry | JAMA Network
https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2850079
People diagnosed with ADHD and autism more recently show lower genetic risk than earlier cases
https://medicalxpress.com/news/2026-06-people-adhd-autism-genetic-earlier.html
ラビアンカ氏らは、1994年から2016年の間にASDまたはADHDと診断されたデンマーク人3万7000人以上を分析し、ASDおよびADHDの遺伝的リスクが時間の経過とともに低下していることを発見しました。現在ASDやADHDと診断される人々は一般集団より高い遺伝的リスクを有しているものの、20年前に診断された患者ほど顕著ではないということです。
それでもASDまたはADHDと診断される人の数は以前より4倍から10倍に増加しています。これは、2つの疾患の基準が拡大され、小児期の疾患ではなく生涯にわたる障害として認識されるようになり、以前より多くの人が当てはまると見なされるようになったことが原因だと考えられています。
ラビアンカ氏らは「診断基準の拡大が診断率上昇の要因であるという見解を支持します。依然として根底となる生物学的リスク要因が存在するのかを理解する必要があります」と記しました。
・関連記事
1分でできるセルフADHDテスト「ASRS v1-1」 - GIGAZINE
ADHDの症状がある若者はそうでない若者と音楽を聴く習慣が異なるという研究結果 - GIGAZINE
ADHDの人は性機能の問題や性生活の苦痛を経験する可能性が高い - GIGAZINE
注意力が散漫になる「ADHD」は狩猟民族の名残である可能性 - GIGAZINE
・関連コンテンツ
in サイエンス, Posted by log1p_kr
You can read the machine translated English article The delayed brain development long assoc….







