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VisaやMastercardへの依存を減らすためにヨーロッパで独自のデジタル決済システムを推進する動きが加速


現代では多くの人々がVisaやMastercardといったクレジットカードを使用していますが、これらはいずれもアメリカ企業であるため、決済履歴や個人情報がアメリカ国外の企業に渡ってしまうという問題があります。そこでヨーロッパでは、VisaやMastercardといった国外の決済手段への依存を減らすため、独自のデジタル決済システムを推進する動きが強まっています。

Europe's $24 Trillion Breakup With Visa and Mastercard
https://europeanbusinessmagazine.com/business/europes-24-trillion-breakup-with-visa-and-mastercard-has-begun/


European alternatives to Visa and Mastercard ‘urgently’ needed, says banking chief
https://www.ft.com/content/fcc215bb-b7b8-4a62-87ed-03f603eb3d14

欧州中央銀行(ECB)クリスティーヌ・ラガルド総裁は2026年1月、アイルランドのラジオ番組に出演し、ヨーロッパにおけるカード決済とモバイル決済のほぼすべてが、VisaやMastercard、PayPal、Alibabaといったアメリカや中国のインフラを通じて行われていると指摘。こうした状況を打開するため、ヨーロッパは独自のデジタル決済システムを緊急に必要としていると主張しました。

ヨーロッパの経済メディアであるEuropean Business Magazineは、「ヨーロッパ人がカードをタップしたり、オンラインで決済したり、友人と請求書を割り勘にしたりするたびに、その取引はアメリカ企業が所有・運営するインフラを経由して行われます」「カード決済はEUにおけるキャッシュレス取引全体の56%を占めています。そして誰が何を、どこで、いつ、いくらで買ったのかというデータは常にヨーロッパの管轄権から外れています」と述べています。


アメリカなどへの依存についてエネルギーや防衛産業、資源、食糧といった分野が取り上げられることが多い一方、デジタル決済については議論の盲点になりがちです。ほとんどの消費者は自分のデータが日常的に国外へ流出していることや、アメリカがその気になれば決済サービスを停止させて経済を混乱させられるということに気付いていません。2022年にはロシアのウクライナ侵攻に対し、VisaやMastercardはロシア国内での決済を停止しました。

ヨーロッパにある16の銀行や金融サービス会社が支援する統合デジタル決済サービス・European Payments Initiative(EPI)のマルティナ・ワイマートCEOは、ヨーロッパはVisaやMastercardなどのアメリカ企業への依存を早急に減らすべきだと主張。「ヨーロッパには国内で使える決済カード制度などの優れた資産はありますが、国境を越えたものは何もありません」と述べ、ヨーロッパの自立性を確保するためにも代替となる決済手段が必要だと訴えています。

こうした状況に対処するため、EPIは2024年にヨーロッパ独自のモバイル決済サービスである「Wero」を立ち上げました。Weroは仲介業者やカードを必要とせずに電話番号だけで送金可能なサービスで、すでにWeroはベルギー・フランス・ドイツで4850万人のユーザーを抱えており、ドイツでは2025年末に小売決済サービスが始まっており、フランスとベルギーでも2026年にサービス開始予定です。

そして2026年2月2日、ヨーロッパ独自の決済ソリューションの開発を目指すEuroPA AllianceがEPIと覚書を交わしました。EuroPAはイタリアの銀行間ネットワークのBancomat、スペインのモバイル決済サービスであるBizum、ポルトガルの決済サービス企業のSIBS、北欧の決済サービスであるVipps MobilePayなどが参加するイニシアチブです。

EPI Company | Bancomat, Bizum, EPI, SIBS and Vipps MobilePay sign MoU…
https://epicompany.eu/media-insights/bancomat-bizum-epi-sibs-and-vipps-mobilepay-sign-mou-to-accelerate-the-rollout-of-sovereign-pan-european-payment-solutions


この覚書によって13カ国にまたがる約1億3000万人のユーザーがWeroに接続されることになります。この取り組みによる直接取引は2026年中に開始され、eコマースおよびPOS決済サービスは2027年に始まる予定です。ワイマート氏はこの覚書について、「ヨーロッパの決済主権はただのビジョンではなく、実現されつつある現実なのです」とコメントしました。

European Business Magazineは、ヨーロッパでは過去にも同様に独自の決済サービスを実現する試みがあったものの、国家間のプライドや銀行間の利害対立によって失敗してきたと指摘。また、VisaやMastercardといった大企業はすでに多くの消費者や事業者を囲い込んでいるため、その点も独自の決済サービス展開の障害になってきたとのこと。こうした問題を踏まえて、EuroPAはすでに存在する各国の決済サービスを連携させることに注力しています。

EPIとEuroPAの覚書はヨーロッパ独自の決済システムを確立するための有望な一歩ですが、VisaやMastercardに取って代わるのは簡単ではありません。EPI独自の推計によると、VisaやMastercardの現実的な選択肢となるには数十億ユーロ(数千億円)規模の投資が必要だとのこと。EUの規制で手数料が抑えられることによる収益性の低下や、消費者の深く根付いた習慣、VisaやMastercardの対抗策なども課題となります。

しかしEuropean Business Magazineは、EU域内の資本市場を統一する資本市場同盟の推進や大国間の競争激化など、ヨーロッパ独自の決済システム実現に向けた政治的な追い風は強いと主張。ラガルド総裁は、「私たちにはそれを成し遂げるための資産と機会があります。ヨーロッパに自ら設けた内部障壁を取り除けば、経済的な富は大幅に増加するでしょう」と述べました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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