宇宙空間で死体はどのように変化するのか?
Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏が宇宙に旅立ったり、全クルーが民間人という宇宙飛行ミッションが成功をおさめたりと、人類が気軽に宇宙に旅立てる日が来るという期待がにわかに現実味を帯びてきています。地球とは大きく環境が異なる宇宙という空間で、「もしも死亡するとどうなるのか」という思考実験について、イギリス・ティーズサイド大学応用生物人類学科のティム・トンプソン教授が解説しています。
Death in space: here's what would happen to our bodies
https://theconversation.com/death-in-space-heres-what-would-happen-to-our-bodies-169890
もし人が地球上で死んでしまった場合、重力により血流がたまり始めて皮膚の表面に死斑と呼ばれる痣が現れるほか、死体の体温が外界の温度まで低下する死冷という現象が生じたり、筋肉繊維にカルシウムがたまって死後硬直という筋肉の硬化現象が生じたりします。こうした現象に加えて腐敗もまた生じ、腐敗によって腸内のバクテリアが体全体に広がり、体を膨張させ、強い匂いを発します。この腐敗が続くと軟組織が破壊されることによって、死後硬直が元に戻り、最終的には骨だけが残ります。
では、宇宙空間で人が死んでしまった場合はどうなるのでしょうか?トンプソン教授によると、まず重力の影響を受ける死斑は宇宙空間では発生しないとのこと。一方、続く死後硬直は身体組織がもたらす結果のため、宇宙空間でも発生します。腸内のバクテリアが軟組織の分解を始める点も同じですが、バクテリアは活動に酸素を必要とするため、酸素のない宇宙空間では分解のプロセスは次第に遅くなります。
地球上では土壌の微生物の助けで分解が進みますが、地球の生命サイクルは他の惑星にはないため、地球と同じようには分解されずに軟組織が残る可能性があります。さらに、火星のような乾燥した砂漠地帯では軟組織が分解されないことに加え、軟組織が乾燥し、ミイラのような状態になる可能性も考えられるとのこと。また、温度変化の激しい空間では、凍結や熱傷などにより遺体が損傷する可能性もあります。
トンプソン教授は「地球上でおきる完全な分解プロセスは宇宙空間では起こらないため、死体は『生きている人間のように見える』可能性が高いと考えられます。私たちが宇宙空間に住み始める際には、新しい死体の埋葬の仕方も考える必要があるでしょう」と締めくくりました。
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