サイエンス

新型コロナウイルスは「脳の血管」を詰まらせて脳にダメージを与えるという研究結果


これまでにも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は脳に影響を与えていることを示唆する研究結果がたびたび発表されてきましたが、フランス・スペイン・ドイツの共同研究チームが新たに「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は脳の内皮細胞にダメージを与える」という研究結果を発表しました。

The SARS-CoV-2 main protease Mpro causes microvascular brain pathology by cleaving NEMO in brain endothelial cells | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-021-00926-1

EU scientists reveal long-term brain damage caused by Covid
https://www.rfi.fr/en/france/20211022-eu-research-reveals-long-term-brain-damage-caused-by-covid

Study reveals how COVID-19 can directly damage brain cells
https://newatlas.com/health-wellbeing/coronavirus-damage-blood-brain-barrier-cells-cognitive-long-covid/

COVID-19によって死亡した患者の脳組織には損傷が確認されるケースがあると判明しているほか、COVID-19から回復した一部の元患者は「回復後も認知症のような症状が続いている」と報告していることから、SARS-CoV-2は何らかの形で脳に影響を与える可能性があるとされています。

新型コロナウイルス感染症で死亡した患者の脳組織で損傷が確認される - GIGAZINE


SARS-CoV-2と脳の関係について、フランス・スペイン・ドイツの共同研究チームは新たにCOVID-19により亡くなった献体の脳をMRIでスキャンするという調査を実施。比較対象の献体に比べ、死んだ毛細血管、いわゆる「ひも状血管(string vessels)」が有意に多くなっていることを突き止めました。

続いて研究チームは実験用のハムスターにSARS-CoV-2を感染させ、感染4日後に紐状血管の量が増加することを確認しました。また、続く実験ではSARS-CoV-2が脳の内皮細胞に直接感染することでプロテアーゼが発現し、免疫反応において重要な役割を担うタンパク質のNF-κB essential modulator(NEMO)を切断しているという可能性が示唆されたとのこと。

今回の研究結果は、献体にみられた脳損傷がSARS-CoV-2によって引き起こされたと断定できない点や、脳損傷の長期的な推移については調査対象外だったことから、SARS-CoV-2が脳に与える影響を全て説明しているわけではないとされていますが、研究チームは「この知見はCOVID-19の急性期だけでなく長期的にも現れる神経学的症状や脳卒中やてんかん発作のリスク増加に関する部分的な説明になる可能性がある」と述べています。


ハムスターを用いた今回の実験では、SARS-CoV-2の影響によると考えられる紐状血管の増加は可逆的だったことから、研究チームは人間においても紐状血管の増加は可逆的な可能性があると主張。また、SARS-CoV-2の感染を受けた内皮細胞の周辺で免疫系が作用することから、研究チームは「ワクチン接種で紐状血管の増加が防げると考えられる」と語っています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
新型コロナウイルス感染症は軽症でも脳に深刻な障害をもたらすという研究結果 - GIGAZINE

新型コロナウイルス感染症で死亡した患者の脳組織で損傷が確認される - GIGAZINE

新型コロナから回復した人の一部が経験する「認知症のような症状」の実態とは? - GIGAZINE

新型コロナウイルス感染症は脳にどのような影響を及ぼすのか? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.