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新型コロナから回復した人の一部が経験する「認知症のような症状」の実態とは?


アメリカの大手新聞社ニューヨーク・タイムズが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から回復した人の一部に見られる、認知症のような症状である「Covid brain fog(頭にかかったもや)」に苦しむ人々を取材し、その実態を報告しています。

How Brain Fog Plagues Covid-19 Survivors - The New York Times
https://www.nytimes.com/2020/10/11/health/covid-survivors.html

これまでに発表された複数の研究により、COVID-19は脳に影響を与えることが判明しており、COVID-19の症状が軽くても深刻な後遺症が残る可能性があることが問題視されています。

新型コロナウイルス感染症は軽症でも脳に深刻な障害をもたらすという研究結果 - GIGAZINE


COVID-19が脳にもたらす影響としては、錯乱・せん妄・昏睡といった意識障害などが報告されていますが、中には「記憶力や集中力の低下、混乱、めまい、日常的な言葉を理解する力の減退」などの認知症状を患う人もいるとのこと。こうした症状は、頭に霧がかかったように物事が思い出せなくなってしまうことから、「Covid brain fog」と呼ばれています。

ニューヨーク・タイムズは、COVID-19が原因の認知症状に苦しむ元COVID-19患者を取材し、「Covid brain fog」の実態を追いました。

◆:リサ・ミゼル氏(53歳)
アラバマ州のクリニックで、ベテランのナース・プラクティショナーを務めていたリサ・ミゼル氏がCOVID-19を発症したのは2020年7月のこと。肺炎で5日間入院する前は、1時間に6人の患者を診察するなど医療の第一線で活躍していました。

しかし、退院してから職場に復帰したミゼル氏は、日常的に行っていた治療や検査を忘れてしまい、以前はよく知っていた専門用語も思い出せず同僚に聞かなければならなくなってしまったとのこと。ミゼル氏があまりにも危なっかしいため、患者を診察しようとしたミゼル氏を同僚が止めたこともありました。

ミゼル氏の症状は少しずつ改善してきていますが、職場には復帰できず病気休業を続けているそうです。ミゼル氏はニューヨーク・タイムズの取材に対し、「診察室を出ると、さっき患者が言っていたことも思い出せない始末です。まるで認知症になってしまったような気がして、仕事に戻るのが怖いです」と話しました。

by Hiroko Masuike/The New York Times

◆:マイケル・レーガン氏(50歳)
2020年3月にCOVID-19にかかったマイケル・レーガン氏は、5日間の治療を経てステントやカテーテルを手がける医療機器メーカーの血管外科専門医としての仕事に復帰しました。

しかし、時折指が震える症状が出るようになってしまったため、医師に動脈の縫合手術を指導する仕事ができなくなってしまったとのこと。さらに、会議でも「まるでばかになってしまったように感じた」と述懐するほど言葉が出てこなくなったレーガン氏は、ほどなくして休職を申請しました。


また、レーガン氏は日常生活の上でも不自由さを感じています。方向感覚をなくしてしまい、犬の散歩に出かけても道に迷ってしまうことがあるほか、ストーブに鍋をかけたことを忘れて散歩に出てしまったこともありました。特にレーガン氏を苦しめたのは、パートナーであるムスタファ・アル・ニアマ氏の誕生日を忘れてしまったことです。

犬のリードを持っているのがレーガン氏で、隣を歩いているのがアル・ニアマ氏です。

by Hiroko Masuike/The New York Times

レーガン氏は目下、セラピストの勧めで自宅近くのランダムな場所までの道を覚え、そこまで散歩をするトレーニングをしているとのことです。

◆:エリカ・テイラー氏(31歳)
テイラー氏がCOVID-19にかかったのは、2020年6月中旬のこと。当時のテイラー氏はCOVID-19を深刻にとらえておらず、ジョージア州アトランタにある非営利団体の弁護士の仕事にも、すぐに復帰できると思っていたそうです。

しかし、COVID-19から回復したテイラー氏はテレビのリモコンを誤って洗濯してしまう有様で、最近引き取った犬の世話もできず里親に返さざるを得なかったとのこと。極めつけは、出かけようと集合住宅の駐車場に立ち入ったところ、駐車場に1台しかない愛車のトヨタ・プリウスが一体どれなのか分からなくなってしまったことです。

テイラー氏は、「Covid brain fog」にかかった時のことを、「ある朝目が覚めると、頭の中が真っ白でした。私はベッドの端に座って泣きながら『なにかがおかしい、誰かに助けを求めなくちゃ』と感じましたが、誰に、何を求めるべきなのかも分からず、自分が誰で、どこにいるのかさえ忘れてしまっていました」と振り返りました。

8月に入り、ようやく症状が落ち着いたテイラー氏は職場に戻りましたが、仕事のメールを読んでもまるで英語ではない言語で書かれているかのように、まったく理解できませんでした。とても仕事が手につかないため、テイラー氏は休暇を取りましたが、最終的に雇用主から解雇を言い渡されてしまいました。

by Hiroko Masuike/The New York Times

ミゼル氏、レーガン氏、テイラー氏らは全員、神経内科医などの専門家に相談をしていますが、症状がいずれ治るものなのかどうかさえ分からない日々が続いているそうです。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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