サイエンス

新型コロナの後遺症であるロングCOVIDに伴う認知機能の低下「ブレインフォグ」は血栓に関連している可能性が示される


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症から数カ月が経過してもさまざまな後遺症が残る「ロングCOVID」の患者の中には、頭の中に霧がかかったようにぼんやりとしてしまい、認知機能や集中力の低下といった問題が生じる「ブレインフォグ」を訴える人もいます。COVID-19で入院した1800人以上の患者を調査した新たな研究で、血管内で血液が凝固した血栓がブレインフォグと関連している可能性があると示されました。

Acute blood biomarker profiles predict cognitive deficits 6 and 12 months after COVID-19 hospitalization | Nature Medicine
https://doi.org/10.1038/s41591-023-02525-y


Long COVID brain fog may be caused by blood clots, say scientists  – POLITICO
https://www.politico.eu/article/long-covid-brain-fog-caused-blood-clots-study-scientists/

Brain fog in long COVID may be linked to blood clots | Live Science
https://www.livescience.com/health/coronavirus/brain-fog-in-long-covid-may-be-linked-to-blood-clots

ロングCOVIDはCOVID-19の発症から数週間~数年にわたり続くさまざまな後遺症の総称であり、強い疲労感や呼吸機能の悪化、認知機能の低下といった症状が知られています。過去の研究では、ロングCOVIDの患者の中には発症から2年近く経過しても認知機能に問題がある人もいると報告されています。

「ロングCOVID」による認知機能の低下は新型コロナ感染から2年以上も持続するケースもあることが判明 - GIGAZINE


ヨーロッパでは3年間で3600万人もの人々に影響を与えたと推定されるロングCOVIDについての洞察を得るため、イギリスの研究チームはCOVID-19で入院した1837人の成人を被験者として、血液中に含まれるバイオマーカーとロングCOVIDによる認知機能の低下の関連性について研究しました。

被験者らは入院時に6つのバイオマーカーについて調査され、COVID-19による入院から6カ月後と12カ月後に認知機能の客観的測定および主観的報告を行いました。なお、被験者らの平均年齢は57.9歳であり、女性が36.6%、男性が57.7%だったとのこと。


分析の結果、血栓やかさぶたを形成するために必要なフィブリノゲンというタンパク質が客観的認知機能の低下に、血栓が分解された際に生じるD-ダイマーというタンパク質の断片が、主観的認知機能の低下を予測する因子になることが判明しました。

血液中のフィブリノゲンが少ない患者と比較して、フィブリノゲンが多い患者は記憶力と注意力のテストで低いスコアを取ったとのこと。また、D-ダイマーが多い人は主観的調査において、D-ダイマーが少ない人よりも認知機能の評価が低く、労働に支障が出ていると報告する傾向があったとのことです。


論文の共著者であり、レスター大学の呼吸器内科教授であるクリス・ブライトリング氏は、「科学がロングCOVIDの原因や潜在的な治療法についての洞察を与え始めていることを、私は楽観的に感じています」と述べています。それでも、依然として回復していない患者も多く存在しており、回復までどれほどの時間がかかるのか不明な点は気がかりだと認めています。

論文の筆頭著者でオックスフォード大学の臨床精神科医であるマキシム・タケ博士は、フィブリノゲンに関連する血栓が脳への血流を変化させているか、あるいは血栓と神経細胞が直接相互作用している可能性があると考えているとのこと。

今回の研究には関与していないサウサンプトン大学の神経学者であるAravinthan Varatharaj博士は、「今後の研究では、抗凝血剤などの血液凝固を標的とする治療が、これらの症状を持つ人々に役立つかどうかを調べる必要があります」と述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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