Appleのプライバシー重視戦略により自社製広告サービスが急成長を遂げている
by Niels Epting
Appleは広告目的の追跡をユーザー自身が制御できる「App Tracking Transparency(ATT)」を「iOS14.5」から有効化し、ユーザープライバシーを保護する戦略をとっています。Appleの戦略によって多くの広告企業や広告主が影響を受ける中、Appleの自社製広告サービスが大きな恩恵を受けていると、経済紙のFinancial Timesが報じました。
Apple’s privacy changes create windfall for its own advertising business | Financial Times
https://www.ft.com/content/074b881f-a931-4986-888e-2ac53e286b9d
Apple's Ad Business Surges After New Privacy Changes on Rivals: Report | iPhone in Canada Blog
https://www.iphoneincanada.ca/news/apples-ad-business-surges-after-new-privacy-changes-on-rivals-report/
The result of Apple's new privacy policy? More money for Apple.
https://mashable.com/article/apple-privacy-policy-advertising-increase
AppleはiOS端末に「IDFA」という広告識別子を割り当てており、アプリ開発者や広告主はIDFAを利用してユーザーの行動を追跡し、広告表示に役立てることができます。ATTは、広告主がIDFAを利用するためにユーザーの事前同意を求めるプライバシー保護機能であり、ATTの導入によってユーザーの多くが追跡を拒否したことから、広告事業を展開するFacebookや広告主は大きな打撃を受けたことが報じられています。
Appleのプライバシー強化でFacebookと広告主がパニックに、実際のインパクトはどれほどだったのか? - GIGAZINE
通常、サードパーティーのプラットフォームを介して広告を購入する企業は、IDFAを利用して広告キャンペーンなどの効果を迅速に知ることが可能です。しかし、ATTを通じてユーザーがIDFAの利用を拒否した場合、キャンペーンの測定結果を受け取れるのが72時間後になる上に入手できる情報の精度も落ちるため、広告の費用対効果が大幅に低下してしまったと報告されています。
ところが、こうした制限はあくまでサードパーティーに適用されるものであり、Appleの自社製広告サービスには当てはまりません。そのため、プライバシー保護を掲げてATTを導入したことにより、Appleはライバルとなる広告企業には不可能な広告の詳細分析やリアルタイムのデータ送信ができるようになり、Appleの自社製広告サービスばかりが恩恵を得るのではないかと指摘されていました。
Appleはプライバシー強化で自社の広告サービスをブーストすることができる - GIGAZINE
Financial Timesは、AppleがApp Store内で展開する検索連動型広告「Search Ads」が、ATTの恩恵を大きく受けていると報じました。Search AdsはApp Store内で検索されたキーワードに対し、設定されたアプリの広告が検索結果の上部に表示される広告サービスであり、1回の検索について1つの広告しか表示されない点が特徴です。
モバイルビジネスの分析企業・Branchの調査によると、調査時点でiPhoneアプリのクリックを通じたダウンロード全体に占めるSearch Adsの割合は58%に上り、ATT導入からの6カ月間で3倍に成長したとのこと。これに伴って、2021年度におけるSearch Adsの収益は50億ドル(約5700億円)に達するとみられており、今後3年以内に200億ドル(約2兆2800億円)に達する可能性があると予想されています。
AppleはFinancial timesに対し、ATTはあくまでもユーザーを保護することが目的であり、Apple自身の優位性を強化するものではないと主張しています。一方でApple関連メディアのiPhone in Canada Blogは、AppleはATTでサードパーティーの広告企業を規制した一方で、自分たちの広告慣行が自社ポリシーに準拠していることを実証していないと指摘しました。
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