3つの自己免疫疾患を抱える女性が免疫系の「リセット」治療で寛解状態に

特定のターゲットを攻撃するように患者の細胞を改造する「CAR-T細胞療法」で、難治性の病気「自己免疫性溶血性貧血(AIHA)」を抱えていた患者が寛解したと科学者らが発表しました。この患者は毎日輸血を必要としていましたが、治療後は1年以上にわたり輸血不要の状態が続いているとのことです。
CD19 CAR-T therapy induces remission in refractory autoimmune hemolytic anemia with ITP and antiphospholipid syndrome: Med
https://www.cell.com/med/abstract/S2666-6340(26)00078-4
Woman With 3 Autoimmune Diseases Enters Remission After Immune 'Reset' : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/woman-with-3-autoimmune-diseases-enters-remission-after-immune-reset
CAR-T therapy drives remission in patient with three autoimmune diseases | EurekAlert!
https://www.eurekalert.org/news-releases/1121990
2025年、ドイツ免疫療法センターのファビアン・ ミュラー氏率いる研究チームが重度のAIHAを患う47歳の女性患者を診察しました。AIHAは、自分自身の赤血球を攻撃する抗体が産生されてしまい、貧血が起こりやすくなる病気です。
AIHAに加え、患者はさらに2つの自己免疫疾患も抱えていました。1つは免疫性血小板減少症(ITP)で、自身の血小板に対する抗体により血小板の数が異常に減少し、出血リスクが高まる病気です。もう1つは抗リン脂質抗体症候群(APS)で、血管内に危険な血栓が形成されるリスクが高まる病気です。
最初の診断を受けてから10年以上の間、患者は抗体療法・ステロイド・免疫抑制薬など9種類に及ぶ治療を受けてきましたが、いずれも持続的な効果は得られなかったそうです。ミュラー氏らが診察した時点で、この患者は貧血を管理するために毎日の輸血を必要とし、血栓を防ぐために抗凝固薬の服用を続けていました。

そこで過去に全身性エリテマトーデス(SLE)という病気をCAR-T細胞療法で治療した実績があるミュラー氏らのチームは、同じ治療法をこの患者に対して実施しました。CAR-T細胞療法は、患者自身の免疫細胞を採取し、特定の標的に対する攻撃性を高めるよう強化した後、体内に戻すという治療法です。
ミュラー氏らはまず患者の白血球を採取し、その中からT細胞を分離しました。そして、3つの疾患すべての原因となっていると考えられたB細胞の表面に存在するCD19というタンパク質を認識できるよう遺伝子改変し、完成したCAR-T細胞を患者に戻し、すべてのB細胞を見つけ出して除去させました。

治療の効果はすぐに現れ、治療開始からわずか1週間後に最後の輸血を受けた後は輸血なしで生活できるようになったそうです。さらに2週間後、患者は体力の回復を実感し、「日常生活を送れるようになった」と報告しました。治療終了から3週間後には、赤血球中のタンパク質であるヘモグロビン値が以前の2倍に増加して正常範囲に戻り、免疫系が赤血球を破壊しなくなったことが示されました。
同時に、ほかの自己免疫疾患も改善しました。危険な血栓形成に関係する抗リン脂質抗体の値は徐々に低下し、陰性を維持しました。また、血小板数も安定しました。数カ月後に患者のB細胞が再び現れた際、そのほとんどが抗原にさらされていないナイーブB細胞で構成されており、この治療によって免疫系がリセットされたことが示唆されました。

ミュラー氏は、この治療が効果的だった理由について、「CAR-T細胞が体内のさまざまな組織へ到達し、成熟した異常細胞だけでなく発達途中の異常細胞まで含めてすべて除去できたためだと考えられます」と説明しています。
この患者は治療終了から1年が経過しても輸血やその他の治療を必要としていないとのことです。白血球数の低下や、骨髄や肝臓への損傷を示唆する軽度の肝酵素上昇は残っているものの、研究チームはCAR-T療法そのものではなく、長年にわたる過去の治療の影響である可能性が高いと考えています。
ミュラー氏は「10年以上病気を抱えていた患者の血液検査値は、わずか数週間で正常化しました。その反応の速さと改善の度合いは驚くべきものでした。重症の自己免疫疾患患者に対してCAR-T療法をより早い段階で用いれば、長年にわたる効果のない治療による合併症を防げる可能性があると考えています。より早期に介入できれば、病気の進行を止め、臓器障害を回避し、患者の人生を取り戻すことができるかもしれません」と語りました。
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