自然環境の破壊は国家安全保障にとっても大きなリスクを生んでいると専門家が指摘

環境破壊は人々の健康に害を及ぼすだけでなく経済にも影響するほか、気候変動が世界的な紛争の火種になるとアメリカの政府機関が警告するなど、さまざまな問題が考えられています。実際に生態系の混乱や環境破壊がどのように社会や政治の不安定化、経済紛争、そして国家安全保障に強い影響を与える可能性があるのかについて、専門家が解説しています。
Ecological disruptions are a risk to national security
https://theconversation.com/ecological-disruptions-are-a-risk-to-national-security-248754

生態系と国際紛争の関連として分かりやすいものに、海洋漁業があります。例えば、1958年から1976年にはアイスランドとイギリスの間で領海や漁業専管水域を巡った「タラ戦争」と呼ばれる紛争が3度も起きており、この争いがもとで現在の排他的経済水域が設定されました。
また、中国が自国沿岸海域で乱獲を繰り返す中で、インドネシアの利益を奪ったとして40隻以上の中国戦を爆破した事件が2016年に発生しています。近年でもアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスが太平洋海域における違法漁業を取り締まる一環で中国海警局の船舶との衝突が日常的に発生していたり、中国漁船団はアフリカや南米沿岸でも活動を拡大しておりこれらの地域の水産資源を枯渇させ政情不安を引き起こしていたりといった問題が発生しています。
そのほか、生態学的に国家安全保障を脅かす例として知られているのは、公衆衛生の問題です。最もよく知られた例として、人と野生動物の密接な接触の結果として動物から人間に感染する人獣共通感染症があります。新型コロナウイルスも人獣共通感染症の例と考えられており、疫学および遺伝学的研究によると、 市場で売られていた野生動物からヒトに感染したと示唆されているため、生態学的に重要な国際的問題として注目されています。
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さらに、野生生物および森林資源の密猟と違法な取引などの環境犯罪は、年間2580億ドル(約38兆円)にのぼる世界最大の犯罪分野のひとつです。希少な野生動物の標本や体の一部が闇市場で法外な価格で取引されてテロ集団や麻薬カルテル、犯罪組織の資金になっていたり、違法伐採がテロ組織の重要な収入源になっていたりと、自然環境の破壊が国家安全保障上のリスクを明確に高めています。
ペンシルベニア州立大学の生態系科学・管理学教授であるブラッドリー・J・カルディナーレ氏は「国家安全保障は軍事力だけの問題ではありません。生産的で安定した生態系、回復力のある生物群、そして天然資源への持続可能なアクセスを維持する国家の能力にも左右されます。自然界は社会と政治の安定において同様に重要な役割を果たしており、国家安全保障の計画においてより一層の配慮がなされるべきだと私たちは考えています」と述べています。
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