サイエンス

気候変動が新型コロナウイルスのパンデミックを引き起こした可能性がある


「気候変動が引き起こす災害で年間2000万人が家を失って難民化している」と報告されるなど、気候変動は人々の生活に深刻な影響を与えています。ケンブリッジ大学とハワイ大学の研究チームが発表した新たな論文では、「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックは気候変動が原因だった可能性がある」と示されました。

Shifts in global bat diversity suggest a possible role of climate change in the emergence of SARS-CoV-1 and SARS-CoV-2 - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0048969721004812

Climate change may have driven the emergence of SARS-CoV-2 | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2021-02/uoc-ccm020221.php

Here's How Climate Change May Have Played a Role in The Emergence of COVID-19
https://www.sciencealert.com/climate-change-may-have-played-a-role-in-the-emergence-of-coronavirus


SARS-CoV-2はコウモリを起源とするウイルスだと考えられており、コウモリから中間宿主となる動物に感染した後、その動物が中国の生鮮市場で販売されて人間へと感染しました。コウモリは免疫反応や炎症反応を調節するメカニズムを有しているため、人獣共通感染症のウイルスを保有しながらも病気にならないと指摘されています。

コウモリが病気にならずに多数のウイルスを媒介するメカニズムとは? - GIGAZINE


ケンブリッジ大学の動物学者であるロバート・ベイヤー氏が率いる研究チームは、「気候変動がSARS-CoV-2の感染に与えた影響」についての調査を実施。遺伝的研究により、SARS-CoV-2のルーツだということが分かっている中国雲南省やミャンマー・ラオスとの隣接地域における気候変動が、植生やコウモリの生息域にどのような影響を与えたのかを分析しました。

気候変動による植生の変化を分析した結果、20世紀初頭の同地域は熱帯低木地だったものの、20世紀末には気候変動の影響で熱帯サバンナおよび落葉樹林に変化したことが判明。このデータを世界中のコウモリの生息条件と照らし合わせると、気候変動によって約40種ものコウモリが同地域に生息域を拡大したことがわかりました。これにより、中国雲南省近辺におけるコウモリ種が保有するコロナウイルスの種類も増加したとのこと。

ベイヤー氏は、「前世紀の気候変動により、中国雲南省はより多くのコウモリ種に適した環境になりました」「これはウイルスが存在する地域を変えただけでなく、動物とウイルス間の新たな相互作用を可能にし、伝染や進化によってより有害なコロナウイルスを生み出した可能性があります」と述べました。


コウモリは生態系の中で重要な役割を担っており、バナナやマンゴーを含む500種以上の植物の受粉にかかわっているほか、ふんが植物の肥料となったり昆虫を食べて虫害を抑制したりと、人間にとって有益な働きをするコウモリもいます。また、コウモリが持つ全てのコロナウイルスが人間に害を及ぼすわけでもありません。

しかし、気候変動によって動物の生息域が減少したり、人間が自然を開発することで動物との相互作用が増加したりすると、危険なウイルスに遭遇することも増えます。また、生息域の減少はコウモリのストレスを増加させて免疫システムを弱めるため、ウイルスが別の動物種に感染するように変異する可能性も高まるとのこと。

今回の研究はあくまでも相関関係を示したものであり、「気候変動によってSARS-CoV-2が誕生した」という因果関係を立証したものではありません。しかし、近年ではウイルスが別の宿主に感染することを気候変動が促進するといった研究結果も増えています。

ハワイ大学の生物地理学者であるカミロ・モラ氏は、「気候変動によって野生動物が持つ病原体が人間に感染しやすくなる」という事実は、世界的な温室効果ガス排出量を削減する重要な動機になり得ると指摘。SARS-CoV-2のパンデミックが甚大な社会的・経済的損害を引き起こした点を考慮して、各国の政府は気候変動を緩和する対策や動物の生息域の保護を実施し、感染症による健康リスクを減らすべきだと研究チームは主張しました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
温暖化が「感染症の流行」を引き起こす恐れがある - GIGAZINE

古代の「ゴミ捨て場」から感染症の流行と気候変動が文明をどう崩壊させたのかをひもとく - GIGAZINE

日本のコウモリから新型コロナウイルスの近縁種が何年も前に発見されていたことが判明 - GIGAZINE

野生のコウモリからこれまでで最も新型コロナウイルスに近いコロナウイルスが発見される、「人工ウイルス説」を否定する新たな証拠か - GIGAZINE

コウモリが病気にならずに多数のウイルスを媒介するメカニズムとは? - GIGAZINE

in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article here.