サイエンス

習慣的なコーヒー摂取は腸内細菌を介して気分やストレスに影響することが判明


コーヒーを飲むと「頭がスッキリする」「気分が上がる」と感じる人は多いものの、その仕組みはこれまで完全には解明されていませんでした。アイルランドのユニバーシティ・カレッジ・コークやイタリアのパルマ大学の研究者からなる国際研究チームが発表した研究では、コーヒーの摂取が腸内マイクロバイオームを変化させ、その結果として脳機能やストレス、気分に影響を与えることが示されました。

Habitual coffee intake shapes the gut microbiome and modifies host physiology and cognition | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-026-71264-8

従来の研究では、適度のコーヒー摂取がさまざまな健康上の利点と関連付けられていたり、コーヒーが脳に直接影響を与えて神経活動と認知結果の両方を形成するという証拠が示されていたりしています。また、1000人以上の参加者を対象とした2024年のメタゲノミクス研究では、150種類以上の食事成分と腸内マイクロバイオームの構成との関係が調べられ、コーヒーがマイクロバイオームの構成要素と最も高い相関関係を示す食品であることが発見されました。

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一方で、コーヒーの摂取、摂取中止、再摂取の経時的変化は十分に解明されていないほか、コーヒー摂取と脳機能の間の媒介因子としての腸内細菌の役割は確立されていませんでした。そこで学術誌Nature Communicationsに2026年4月21日に掲載された研究では、腸内マイクロバイオームと脳の間の双方向のコミュニケーション経路である「腸内の細菌叢(さいきんそう)・腸・脳軸」におけるコーヒーの影響を調べました。

ユニバーシティ・カレッジ・コークらの研究チームは自己申告式の質問票を通して、コーヒーの摂取、摂取中止、および再導入が認知、気分、および行動に及ぼす時間的影響を調査しました。その上で、健康な成人を対象にコーヒーを飲む期間、一時的に中止する期間、再び摂取する期間を設けることで、「腸内細菌の構成」「腸内代謝物(メタボローム)」「認知機能や行動」「気分・ストレス指標」を便と尿のサンプルと心理テストおよびアンケートで統合的に測定しています。なお、カフェインとは独立してコーヒー特有の効果があるかどうかも評価するため、カフェインレスのコーヒーとカフェイン入りのコーヒーの比較も実施しています。なお、コーヒーの種類や温度については論文で説明がありませんが、主にカフェインやポリフェノールといった成分に焦点が当てられた実験のため、ミルクや砂糖は入れずに提供していると考えられます。

結果として、コーヒーを飲む人は胃酸や腸酸の分泌に関与するとされる一部の腸内細菌の相対存在量が著しく増加し、一部の代謝物のレベルが低下していたことが判明しました。コーヒー摂取により腸内細菌の構成自体は大きく変化しませんでしたが、微生物が産生する代謝物のプロファイルに変化が見られました。また行動面ではコーヒーを飲む人は衝動性と感情反応性の改善が強く、カフェインレスコーヒーを摂取した人のみが記憶力や学習能力の顕著な向上を見せました。


参加者の非標的糞便代謝物レベルを比較したところ、コーヒーに含まれるカフェインとポリフェノールが代謝物の全体的な排せつに大きく寄与しているということが確認されました。そのため、「コーヒーの摂取は腸内微生物叢の多様性全体を変えることなく、特定の微生物集団に変化をもたらす」と研究者らは結論付けています。

介入実験の前と後に実施した質問票に基づくと、カフェイン入りコーヒーとカフェインレスコーヒー摂取した人はともにストレス、うつ病の強さを図るBDI、衝動的な行動を図るUPPS-Pで改善しました。一方で、不安と心理的苦痛の尺度においては、カフェイン入りのコーヒーを再導入したグループのみが改善しました。特に、気分に関わるセロトニンの前駆体であるトリプトファンの代謝経路において、コーヒー摂取が腸内細菌を介してバランスを調整している形跡が見られました。これは、カフェイン入りコーヒーの再導入で不安や心理的苦痛が改善したメカニズムの一端であると考えられます。

コーヒーがストレス対処能力に及ぼす影響をさらに調査するために、ストレスホルモンであるコルチゾールの検査も行われました。その結果、コーヒーを飲む人と飲まない人の間でコルチゾールレベルは酷似しており、コーヒーはストレスの原因を減らすのではなく、脳がストレスをどう受け止めるかという「感情反応性」を和らげることで、メンタルヘルスを支えている可能性が示されています。


全体として、コーヒーは衝動性と感情反応性に影響を与えることが分かったと研究者らは結論付けています。カフェイン入りコーヒーは不安と認知機能の改善、カフェインレスコーヒーは記憶力や睡眠の質、身体活動の向上と、コーヒーの種類によって異なる利点があることも示唆されています。これらの違いは、コーヒーの摂取によって食事とは独立して腸内細菌叢に明らかな違いが発生し、腸内環境を介して脳機能への影響を与えている可能性が考えられています。

研究の責任者であるユニバーシティ・カレッジ・コークのジョン・クライアン教授は「腸内環境の健康に対する一般の関心は飛躍的に高まっています。消化器系と精神の健康の関係についても理解が深まってきていますが、コーヒーが腸脳軸に及ぼす影響のメカニズムは依然として不明なままです。私たちの研究結果は、コーヒーがマイクロバイオームと神経系に及ぼす影響、そしてより健康なマイクロバイオームのための長期的な潜在的効果を明らかにしました。コーヒーは、微生物の集合的な働きや、微生物が利用する代謝産物を変化させる可能性があります。人々が適切な消化バランスのために食生活の改善を検討し続ける中で、コーヒーは健康的なバランスの取れた食事の一環として、さらなる介入策として活用される可能性を秘めています」と語りました。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

You can read the machine translated English article Habitual coffee consumption has been fou….