サイエンス

寿命の50%は遺伝によって決まる可能性があると研究が示唆


イスラエルの世界的に有名な総合研究センターであるワイツマン科学研究所の分子細胞生物学者らが、人間の寿命がどれくらい遺伝に影響されるかを推定するため、事故や感染症といった外的要因による死亡を除外した数理モデルを作成しました。1世紀以上にわたるデータを分析した結果、寿命の50%は遺伝的要因であると結論付けられています。

Heritability of intrinsic human life span is about 50% when confounding factors are addressed | Science
https://www.science.org/doi/10.1126/science.adz1187


Lifespan may be 50% heritable, study suggests | Live Science
https://www.livescience.com/health/ageing/lifespan-may-be-50-percent-heritable-study-suggests

人間の寿命はどの程度遺伝性があるのかという「遺伝率」については、過去の研究では低く見積もられています。「ある形質が遺伝的に大きく左右される場合、一卵性双生児の相関関係は二卵性双生児の相関関係よりもはるかに高くなるはず」という前提に基づいた双生児研究では、寿命の遺伝率は20~25%と想定されました。また、大規模な家系研究では6%程度と低い数値が推定されています。ハーバード大学医学部などの研究チームが2025年に発表した研究では、遺伝的要因が寿命の変動に占める割合は2%未満であり、環境要因が約17%と遺伝的要因よりもはるかに健康と長寿に影響を与えることを示唆しています。

人の寿命を左右するのは遺伝子よりも環境や選択だという研究結果 - GIGAZINE


寿命に関する推定が難しい主な理由として、データの収集に長い時間がかかる点があります。また、死亡率には暴力や事故、感染症などの外因性死亡率と、遺伝子変異や老化関連疾患による内因性死亡率があり、さまざまな要因が関係している点も分析が難しい理由となっています。

ワイツマン科学研究所の分子細胞生物学者であるベン・ シェンハブ氏らの研究チームは、1世紀以上にわたるデータを分析した上で「現在の寿命の遺伝率の推定値は低すぎる」と結論付けました。そこで、遺伝率の推定が低く算出される理由を外因性死亡率と内因性死亡率をまとめてしまっている点にあるとして、外因を除外した内因性死亡率の遺伝率を調べました。寿命研究のほとんどが用いる大規模なコホートは、外因性死亡率がかなり高かった18世紀と19世紀に生まれた人たちのデータであると論文では指摘しています。


研究チームは外因性死亡率に加えて、データ分析の対象に含める最低年数である「カットオフ年齢」についても、遺伝率の推定値に及ぼす影響を調査しました。論文によると、外因性死亡率とカットオフ年齢という2つの要因が、寿命の遺伝率推定値に及ぼす影響について体系的に調査されたことはないそうです。

結果として、外因性死亡率が20歳から40歳までに与える影響は横ばいの傾向にありますが、高齢になると指数関数的に上昇することが判明しました。以下のグラフは横軸が年齢、縦軸が死亡率で、実線が外因性死亡率、青色の点線が内因性死亡率です。また、外因性死亡率は19世紀から20世紀にかけて急激に減少したことも判明しています。


しかし、過去のコホートデータには外因性死亡率を補正するのに十分な死因情報がないため、単純に除外するのが難しかったとのこと。そこで研究チームは内因性死亡率の遺伝率を推定する数理モデルとして、独自の寿命分布を持つ遺伝的に異なる集団を生成する手法を開発しました。これにより、外因性死亡率とカットオフ年齢の両方を調整した上で、寿命への遺伝率の標準化された推定を可能にしたと研究チームは述べています。

この数理モデルに基づいて外因性死亡率を考慮した双生児研究を実施した場合、内因的死亡率の遺伝推定率は従来考えられていた数値の2倍程度となる「約55%」まで増加すると結論付けられています。マウスの寿命の遺伝率や他のほとんどの生理学的形質の遺伝率も平均50%前後と考えられており、これらと一致する数値であると研究チームは指摘しました。

人間の寿命の遺伝率が高い場合、長寿遺伝子を特定することで老化のメカニズムを明らかにし、医療や公衆衛生に役立てることなどが期待できます。オランダ・ライデン大学の遺伝学者で本研究の共著者であるヨリス・ディーレン氏は「重要な点として、遺伝率が50%と推定されるからといって、長生きが保証されるわけでも短命になる運命になるわけでもありません。この研究が示しているのは、長生きする傾向は遺伝的に備わっており、残りは何をするか、どこに住むかによって決まるということです。環境は依然として非常に重要であり、人々はできる限りライフスタイルを最適化するよう努めるべきです」と語りました。

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in サイエンス, Posted by log1e_dh

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