生き物

動物が感じる「時間」はどう異なるのか?


60Hzのモニターは1秒間に60回点滅していて、人間の目には滑らかな映像として映りますが、ショウジョウバエにはまるでナイトクラブのストロボのようにチカチカと光って見えるとされています。このように、生き物によって異なる「時間」の感覚について、生態学者のケビン・ヒーリー氏が解説しました。

Pace of ecology drives the tempo of visual perception across the animal kingdom | Nature Ecology & Evolution
https://www.nature.com/articles/s41559-026-02994-7

Animals’ perception of time is linked to the pace of their life – new study
https://theconversation.com/animals-perception-of-time-is-linked-to-the-pace-of-their-life-new-study-275124

人間にとって速く飛ぶボールはぼやけて見えますが、トンボやハトは非常に詳細に見ることができます。しかし、カタツムリのような一部の生物にとっては、その動きは速すぎてまったく認識できない可能性があります。


なぜ動物が時間を異なって知覚するのかを分析するため、ヒーリー氏は光の点滅に対する網膜の電気活動を記録する「エレクトロレチノグラム(網膜電図検査)」を用いた実験を行いました。この検査では、動物が光の点滅を認識できなくなるまで点滅速度を徐々に上げていくことで、その時間知覚の限界を特定することができます。

この検査をさまざまな動物に対して行ったところ、動物によって大きな違いがあることが分かりました。まず、人間の知覚限界はおよそ1秒間に65回(65Hz)の点滅です。人間は他の動物と比べてもまずまずの時間知覚能力を持っていて、ラット(47Hz)など多くの哺乳類より高い一方で、イヌ(84Hz)よりはやや低い値です。

一方、ツェツェバエやトンボは最大で1秒間に300回の点滅を識別することができ、シロエリヒタキのような鳥は1秒間に138回まで認識できることが示されました。別の実験でも同様の結果が示されています。

小鳥は超高速で点滅する光を認識する能力が人間の2倍以上も優れている - GIGAZINE


深海魚のアブラソコムツは1秒間に12回しか認識できず、さらに極端な例ではオニヒトデやアフリカマイマイはわずか0.7回しか認識できません。

なぜこのような差が生じているのかを説明するものとして、「オートラム仮説」という考え方があります。これは、高速で世界を捉えるには多くのエネルギーが必要であり、素早い反応を必要とする種だけが優れた時間知覚を持つという考え方です。

例えば、飛行する鳥や他の種を捕食するトンボなどは高い時間知覚能力を持ちますが、これは生きていく上で素早い反応が必要なためだと考えられます。対照的に、時速22メートルという最高速度しか出せないオニヒトデのようなゆっくり動く種は時間知覚能力が低くなります。


実験では、水中環境では小型の種ほど時間知覚能力が高いことも分かりました。例えば、体重1グラムのイトヨは67Hzで見ることができるのに対し、350kgのオサガメは15Hzでしか見ることができません。ヒーリー氏は「水中環境でこうなる理由はまだ分かっていませんが、水が瞬間的な動きを可能にするためではないでしょうか」と指摘しました。

また、暗い環境に生息する種は時間知覚能力が低いことも分かりました。例えば、ダイオウグソクムシのような深海に住む等脚類は4Hzでしか見えず、夜行性のトッケイヤモリは21Hzしか認識できません。ヒーリー氏は「時間知覚が低いのは、暗い環境ですべての光子を捉える必要があるためです。暗闇ではカメラで遅いシャッタースピードを使うのと同様に、発火速度が遅い網膜細胞を持つ目は暗闇で物体を捉えるのに適しています。しかし、このような暗所への適応は時間知覚を犠牲にしており、夜間に撮影した手ぶれ写真のように、動きがぼやけて見えます」と解説しています。


ヒーリー氏は「床に落ちるコップ、通りを猛スピードで走る車など、私たち人間にとって1秒というスケールは高速に過ぎ去るものであり、なんとか認識できるものの、細部までは把握できません。しかし、トンボは『マトリックス』のように世界をスローモーションで見ているかのように感じられるでしょう。一方で、ヒトデやカタツムリなどの極めて時間知覚が低い種は、世界がもっとぼやけて見えているように感じられるでしょう。1秒という時間自体は物理的には同じであっても、それをどのように知覚するかは、生物の生き方の速さに依存しているのです」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1p_kr

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