トランプ元大統領退任前後に突如出現していた1億7500万個のIPアドレスをアメリカ国防総省が再取得したことが判明
複数の地域でIPv4アドレスが枯渇する中、GlobalResource Systemsと名乗る企業がジョー・バイデン氏が第46代アメリカ大統領に就任した2021年1月20日に5600万個ものIPv4アドレスの存在を公表し、2021年4月までに1億7500万個ものIPv4アドレスの存在が明らかになったことが大きな話題となっていました。新たに、1億7500万個のIPv4アドレスの大部分がアメリカ国防総省の管理下に置かれたことが明らかになっています。
Pentagon retakes control of IP addresses it had shifted in final minutes of Trump’s presidency - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2021/09/10/pentagon-internet-protocol-addresses-trump/
Wait, Did AS8003 just disappear? | Kentik
https://www.kentik.com/blog/wait-did-as8003-just-disappear/
問題のIPv4アドレスは、アメリカ国防総省が保有していたもので長年休止状態が続いていましたが、2021年1月20日にBorder Gateway Protocol(BGP)上に公開されたことからフロリダに拠点を置く無名企業・GlobalResource Systemsの管理下に置かれていることが判明しました。1億7500万個という個数は全世界に存在するIPv4アドレスの約6%に相当し、その価値は数十億ドル(数千億円)に及ぶと推測されていました。
このIPv4アドレスの公表は、国防総省の調達部門「Defense Digital Service(DDS)」によるものであることが判明しており、DDSのディレクターを務めるブレット・ゴールドスタインはIPアドレス空間の不正使用を評価・防止するためのパイロット活動を行ったと述べています。しかし、このパイロット活動の詳細は不明で、国防総省やDDSではなくGlobalResource SystemsがIPv4アドレスを発表した理由も不明。さらに、IPv4アドレスが公表されたタイミングがトランプ元大統領が退任してバイデン大統領が就任する時刻の数分前であったことから、「トランプ氏の辞任に際し、国防総省が保有するIPアドレスの一部を売り払ったのでは?」とウワサされるなど、突如として大量のIPv4アドレスが公表されたことに対して大きな注目が集まっていました。
枯渇が叫ばれるIPv4アドレスが突如1億7500万個も出現、一体何が起こったのか? - GIGAZINE
そして2021年9月7日に、国防総省は世界中のネットワーク管理者に対して、1億7500万個のIPv4アドレスを国防総省の管理下に置いたことを公表しました。
問題のIPv4アドレスには、「AS8003」というAS番号が割り当てられていましたが、IPアドレスの管理を行っているRIPE NCCのデータを確認すると、2021年9月8日にAS8003の公開が停止していることが分かります。
AS8003の追跡を行っていたネットワーク監視会社・Kentikの分析ディレクターを務めるダッグ・マドリー氏は、AS8003に登録されていたIPv4アドレスの大部分を含む「AS749」が2021年9月8日から登場していることを発見しています。
また、DDSは今回の発表に合わせて「IPv4アドレスの公表は2020年秋頃から計画されており、準備が整った2021年1月中旬に開始しました」と述べ、バイデン大統領の就任時刻と当該計画の開始時刻が無関係であることをアピールしています。しかし、「IPアドレス空間の不正使用を評価・防止するためのパイロット活動」が何を意味し、国防総省が何を行っていたのかは不明なままです。
・関連記事
ついに北米のIPv4アドレスが本当に枯渇 - GIGAZINE
ヨーロッパに割り当てられていたIPv4アドレスがついに枯渇 - GIGAZINE
ヨーロッパのIPv4アドレスが2019年11月にほぼ完全に枯渇 - GIGAZINE
Amazonが保有しているIPアドレスだけで2500億円以上の資産価値がある - GIGAZINE
IPv6はなぜ普及しないのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ