Googleが香港政府の要求に応じて一部ユーザーのデータを渡していたことが判明、以前の発表と矛盾するとの指摘も
香港では2020年7月1日に「香港国家安全維持法」が施行され、反政府的活動の取り締まりが強化されました。これに対してGoogleやFacebookなどの大手IT企業は反発の姿勢を示し、香港政府に対するユーザーデータの引き渡しを停止するとしていましたが、「Googleは2020年7月~12月に香港政府が行った要求のうち3件に応じてユーザーデータを引き渡した」と報じられています。
Google handed user data to Hong Kong authorities despite pledge after security law was enacted - Hong Kong Free Press HKFP
https://hongkongfp.com/2021/09/11/google-handed-user-data-to-hong-kong-authorities-despite-pledge-after-security-law-was-enacted/
Google Complies With Hong Kong Data Requests After Vowing Not To
https://uk.pcmag.com/security/135609/google-complies-with-hong-kong-data-requests-after-vowing-not-to
香港国家安全維持法は香港に対する転覆行為や香港に介入する外国勢力との結託、中国政府や香港政府への憎悪を扇動する行為などを取り締まりの対象とし、香港に中国政府直轄の保安機関である国家安全維持公署を設立することなどを定めています。これは、香港における言論の自由を保障してきた一国二制度を崩壊させると批判されており、Google・Facebook・Twitterなどの大手IT企業は反発を表明。香港政府に対するユーザーデータの提供を停止するとしていました。
Google・Facebook・Twitterが香港国家安全維持法に反発、香港政府のデータ要求を拒否する構え - GIGAZINE
Googleは2020年8月にも「今後は香港政府に直接ユーザーデータを提供しない」と発表し、これ以降はアメリカとの刑事共助条約を通じてデータ開示の要求に応じると香港の警察当局に通知したとのこと。
Google、香港当局へデータ直接提供中止 国安法施行で: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62674130U0A810C2MM8000/
ところが、香港を拠点とする非営利のニュースサイト・Hong Kong Free Press(HKFP)は2021年9月11日、「Googleは香港国家安全維持法が施行された後の2020年7月~12月に香港政府から受け取った43件のリクエストのうち、3件に応じてユーザーデータを提供した」と報じました。
HKFPの問い合わせに応じたGoogleは、ユーザーデータの提供に応じた3件のリクエストのうち、1件は生命の脅威に関する信頼性の高い緊急開示要求であり、2件は人身売買に関与していたと説明しています。これら3件のリクエストは刑事共助条約を通じたものではありませんでしたが、Googleのグローバルポリシーでは、生命の脅威に関する緊急開示要求は刑事共助条約を介する必要はないとのこと。
Googleが香港政府に提供した3件のデータには、ユーザーのコンテンツデータは含まれていなかったそうです。Googleのポリシーによると、政府機関に対してはユーザー名・関連するメールアドレス・電話番号・IPアドレス・課金情報・ログインやコメントなどに関連するタイムスタンプ・メールのヘッダーといった情報を提供する可能性があるとされています。また、Googleは政府のリクエストについて対象ユーザーに電子メールで通知する場合がありますが、今回リクエストに応じた3件でユーザーへの通知を行ったかどうかについて、HKFPの問い合わせに回答しませんでした。
なお、Facebookは6月に公開した透明性レポートで、2020年後半に香港政府がユーザーデータを要求した202件のリクエスト全てを拒否したと述べているほか、Twitterも2020年後半には1件も香港政府からのリクエストに応じなかったとのこと。AppleとMicrosoftは、この期間のリクエストに応じたかどうかを発表していません。
GoogleはHKFPに対し、依然として香港国家安全維持法に関するものを含む香港政府のリクエストの大部分に対し、外交手続きを通すことを要求すると述べています。しかし、オンラインプライバシーとセキュリティの専門家であるエリック・ファン氏は、Googleの発表は2020年の公式声明と矛盾しており、順守しなかった理由の説明もしないのは驚きだと指摘しました。
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