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「中小ブランドの成長に欠かせないプラットフォーム」というAmazonから撤退したメーカー、その理由とは?


世界最大のネット小売業者であるAmazonに対しては、「現代の強盗男爵」と批判する声もあるように、同社のビジネスの在り方に懐疑的な目を向けるメディアや経済人は後を絶ちません。そんなAmazon上での商品の販売を取りやめた中小企業の事例を、海外メディアのThe Vergeが紹介しています。

As demand for bikes surged, Amazon got in the way - The Verge
https://www.theverge.com/22618306/pacific-northwest-components-bike-company-quit-amazon-support-indie-shops

Amazonのグローバルビジネス開発部門で仕事をしていたというアーロン・カーソンさん。同氏はAmazonを離れ、同社で培ってきた販売アルゴリズムの知識を活用し、2015年に妻のエミリーさんと共にマウンテンバイクのパーツを販売するPacific Northwest Componentsという企業を立ち上げます。


創業から順調に成長していたPacific Northwest Componentsですが、2020年に新型コロナウイルスのパンデミックが起きた際、自転車業界で世界的なパーツの供給不足が発生することとなります。ほとんどの自転車メーカーが製造の拠点をアジアに置いており、Pacific Northwest Componentsもパーツの製造を台湾のメーカーに依頼していたため、製品の納期は通常時が45日程度だったところ、パンデミック以降は最大200日にまで延びることとなったそうです。

自転車パーツの供給不足に苦しんでいるのはPacific Northwest Componentsだけではありません。個人経営の自転車販売店などへのパーツ供給が追い付かなくなっていることを聞いたカーソンさんは、「Amazon上で販売している自社パーツを引き上げて、個人経営の自転車販売店に供給することができれば危機に瀕した人々を助けることができるのでは?」と考えたそうです。


また、カーソンさんがAmazonでの自社製品の販売から撤退しようと考えた理由は他にもあります。そのひとつは、自転車パーツの選択は顧客と顧客が利用する自転車に依存するため、パーツの購入は非常に複雑になり、ただパーツを販売するだけのAmazonでは「完璧なカスタマーサービスを顧客に提供しているとは言い難い」と感じていたという点です。

他にも、Pacific Northwest ComponentsはAmazonで横行する返品詐欺の被害に何度もあっていたり、サードパーティーの販売業者がプライムラベルを取得することが可能となるSeller Fulfilled Primeの維持費の高さに悩んでいたりしたため、これらの問題を一気に解消できるということで最終的にAmazonでの販売を停止する決断に至ったそうです。

なお、Amazon上で自社製品の販売を停止したのはPacific Northwest Componentsだけでなく、その他多くの自転車関連メーカーもAmazonからの撤退を表明しているそうです。さらに、過去数年間でAmazon上での自社製品の販売を辞めた企業の中には、ナイキやIKEA、ビルケンシュトックといった名だたるブランドもあります。どの企業もAmazonの商慣行や偽造品を放置している点、顧客データへのアクセスの欠如などを不満として、Amazonから撤退しています。

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by tookapic

カーソンさんがPacific Northwest Componentsの製品をAmazon上から削除したのは2021年6月のこと。カーソンさんは「新型コロナウイルスのパンデミックで影響を受けた業界を救うために、パーツの在庫を独立した自転車販売店に販売したいと考えました」と語っています。

しかし、Pacific Northwest ComponentsのパーツをAmazon上から削除するということは、「売上の20~30%が一晩にして消えるということを意味します」とカーソンさん。ただし、Amazon上での販売を止めたことで、カスタマーサービスと返品の業務をPacific Northwest Componentsが直接行うこととなり、「顧客とのつながりを取り戻すことができた」とも語っています。

なお、カーソンさんはPacific Northwest Componentsのパーツを卸している取引先に「AmazonでPacific Northwest Components製品の取り扱いを辞めてほしい」と連絡を入れた際に、取引先から提案を拒否されると思っていたそうですが、実際には多くがAmazonでの販売取り止めに興奮して賛同してくれたそうで、多くの中小企業がPacific Northwest Componentsと同じような悩みを抱えていることを肌で実感したとのこと。


カーソンさんは、「結局のところ、大手の自転車販売店などがAmazonで製品を販売していた唯一の理由は、製品販売のために他社と競争しなければならなかったからにすぎません」とコメント。一方で、Pacific Northwest Componentsのような中小ブランドは「Amazonの使用を余儀なくされています」と語り、無名のブランドを成長させるにはAmazon上で製品を販売するのが一番の近道であるとしています。

Amazon上でブランドとしての地位を確立したPacific Northwest Componentsの場合、Amazonから撤退したことで売上は確実に落ちているそうです。しかし、Pacific Northwest ComponentsのようにAmazonで名を上げ、Amazonから撤退したのち、当時と同程度の売上を記録できるようになったブランドは複数存在しています。

そのため、カーソンさんはPacific Northwest ComponentsがAmazonでの売上を取り戻すのに必要なことは、「より多くの自転車販売店でPacific Northwest Componentsのパーツが取り扱われるようになること」としており、この実現に数年かかるとしても実現自体は難しいことではないと楽観視しています。

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in ネットサービス, Posted by logu_ii

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