AmazonがNSAと1兆円規模のクラウド契約を締結、Microsoftは抗議
2021年8月10日、アメリカ国家安全保障局(NSA)がAmazonと100億ドル(約1兆1000億円)のクラウド契約「WildandStormy」を締結したと報じられました。この契約はNSAを統括するアメリカ国防総省がMicrosoftとの同規模の契約をキャンセルした直後のものであり、Microsoftは選択プロセスをめぐって政府監査院に抗議しています。
NSA Awards Secret $10 Billion Contract to Amazon - Nextgov
https://www.nextgov.com/it-modernization/2021/08/nsa-awards-secret-10-billion-contract-amazon/184390/
In familiar refrain, it's Amazon versus Microsoft for this $10B NSA cloud contract -- Washington Technology
https://washingtontechnology.com/blogs/editors-notebook/2021/07/nsa-cloud-protest.aspx
この件を報じた海外メディアのNextgovによると、NSAがAmazonと締結した契約の詳細は不明ながら、NSAが主要な機密データをクラウドで一元管理しようとする試みの一環であると見られるとのこと。NSAは以前から膨大なデータの処理を実行するために民間のクラウドサービスを導入する意向を示していました。
Amazonと政府機関との関係は2013年にさかのぼり、当時Amazonは自社クラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」を中央情報局(CIA)に提供する契約「C2S」を600万ドル(約6億6000万円)で結びました。この契約において、NSAを含めた他の諜報(ちょうほう)機関もAWSを利用していたとのこと。また、Amazonは2020年にC2Sに継ぐCIAとのクラウド契約「C2E」を、GoogleやMicrosoftなど他の企業と同時に締結しました。
なお、今回の契約は国防総省がMicrosoftと締結した100億ドル規模のクラウド契約「Joint Enterprise Defense Infrastructure(JEDI)」を2021年7月6日にキャンセルした直後のもの。Microsoftは今回の契約相手の選択プロセスに問題があるとして、政府監査院に抗議しています。NSAは「適切な連邦規制に従って抗議に対応する」と述べました。
JEDIの契約に際しては、国防総省が設定した要件を満たす企業がAmazonとMicrosoftしかないとされる中、2019年10月に大本命のAmazonをのけてMicrosoftが契約を獲得。しかし、選択プロセスに問題があるとしてAmazonが抗議を行っていました。
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Microsoftの広報担当者はNextgovに対し、「政府監査院を通じて抗議を行うという決定に基づき、慎重かつ責任を持って法的権利を行使する」と述べました。なお、政府監査院は2021年10月29日までにMicrosoftの抗議に関する決定を下す予定です。
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