トランプ政権が外国製オープンソースAIモデルの事実上の禁止措置を再検討、中国の台頭に懸念

アメリカ政府は外国製のオープンソースAIモデルを事実上禁止しようと試みており、2026年7月に中国企業のMoonshot AIが超大型オープンAIモデル「Kimi K3」をリリースしたことで、アメリカ政府の競争規制の動きが活発化していると関係筋の話から報じられています。
The secret Trump administration battle to fight Chinese AI
https://www.axios.com/2026/07/20/ai-us-china-open-source-kimi
アメリカ商務省は2025年に、中国やアラブ首長国連邦(UAE)、南アフリカ、イラン、台湾などに拠点を置く80社を「エンティティリスト(取引規制対象リスト)」に追加したことを発表しました。政府はこの他にも複数の中国のAI研究所をエンティティリストに追加することを検討しており、政権に近い情報筋がAxiosに語った内容によると、「アメリカ企業が中国のモデルをホストできるのは、セキュリティを保証し、侵害が発生した場合に責任を負う場合に限る」という大統領令の発令が検討されていたそうです。
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一方で、規制がイノベーションを阻害することを懸念する政権当局者たちは、中国のAIを規制する規制案を退けていました。しかし、規制に反対する主要な人物が人事異動したことや、より強力な中国製AIモデルの台頭や新たなサイバーセキュリティへの懸念も相まって、禁止措置の動きが再び勢いを増していることが報じられています。
実際に、中国企業のMoonshot AIが日本時間の2026年7月17日に発表したAIモデル「Kimi K3」に対し、アメリカ政府の競争規制の動きが活発化していると報じられています。Kimi K3は、一部のベンチマークテストでGPT-5.6 SolやClaude Fable 5を超えるスコアを記録しており、「世界初のオープンの3Tクラスモデル」としてアピールされました。アメリカ製の最先端AIモデルに匹敵するオープンモデルの台頭を受け、翌日にはハイテク株中心のナスダック総合指数は1.4%下落したほか、Googleの親会社であるAlphabetやMetaの株価は2~4%下落しています。
GPT-5.6 Solに匹敵する中国製AIモデル「Kimi K3」が登場、2.8兆パラメーターの超大型オープンモデル - GIGAZINE

OpenAIの戦略未来部門責任者のディーン・W・ボール氏はXの投稿で「戦争省、運輸省、エネルギー省、農務省、商務省、NASA、議会はすべて、根拠の薄い危険性の主張を理由に、従業員の中国製AIの使用を禁止しました。これはすでに規制対象の企業にメッセージを送っています。すべてこれがこの政権下で起こりました」と明かしています。
The departments of war, transportation, energy, agriculture, commerce, NASA, and Congress have all blocked their employees from using Chinese AI, citing ill-justified claims of danger. This already has sent a message to regulated firms. All of this happened during this admin.
— Dean W. Ball (@deanwball) 2026年7月19日
また、投資家で科学技術に関する大統領諮問委員会共同議長を務めるデイビット・サックス氏は「我々はAI政策において重大な転換点に立っています。AIモデルの収益面ですでに二強状態にあるAI研究機関は、政府にオープンソースの競争相手を排除するよう求めています」と投稿しました。この二強状態にあるAI研究機関はOpenAIとAnthropicを指していると思われます。
I’m not sure whether Dean Ball is confessing to a regulatory capture strategy or simply predicting this will happen (he now says the latter). Either way, the weaponization of regulatory uncertainty as a competitive tool should be completely unacceptable.
— David Sacks (@DavidSacks) 2026年7月19日
He argues there’s no… https://t.co/ZxIFabAJZW pic.twitter.com/0eLk6ltU0F
テクノロジーが社会に与える影響について分析する記事「Stratechery」を執筆するベン・トンプソン氏は、中国発のオープンウェイトAIモデルを過度に脅威視する見方に異議を唱えています。Kimi K3などの中国モデルは性能面で急速に最先端へ近づいているものの、AI市場は今後「収益性を高めるために、より優れたコスト構造を持つ必要がある」とトンプソン氏は分析しています。トンプソン氏によると、AnthropicやOpenAIが現代の需要過多によって高い料金を設定しているだけであり、現時点では中国モデルがOpenAIやAnthropicと同等の性能をより安価に提供できる段階には達していないとのこと。一方で、GPU供給が増えてAIがコモディティ化すれば価格競争が重要になると分析しています。
中国がオープンウェイト戦略を推進する狙いは、AIモデルそのものではなくロボティクスなど中国が強みを持つ産業全体を発展させるためだと考えられています。そのためトンプソン氏は、アメリカが中国モデルを排除するのではなく、自国でもオープンなAIエコシステムを育成して中国と対等な立場で競争できるようにイノベーションを促進するべきとしています。またサイバーセキュリティ分野では、中国製モデルへの依存を避けるためにも、アメリカ製の高性能AIをより自由に利用できる環境が必要だと指摘しています。

トンプソン氏の分析に対し、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは「中国製モデルを最も恐れているのは、AnthropicやOpenAIに天文学的な高評価額で投資したベンチャーキャピタル(VC)ではないか」という予想が議論されています。Anthropicの評価額は1.2兆ドル(約194兆円)、OpenAIは8500億ドル(約138兆円)を目標としており、これらの評価額は研究所が莫大な利益を生み出すという前提に基づいていました。しかし、中国の研究所は優れたオープンモデルを無料で公開しており、もし最先端の研究所が中国企業との競争で価格を引き下げた場合に、評価額の目標は達成されずVCは大きな損失を被る可能性があります。一方でトンプソン氏は「価格競争が発生するほど中国モデルはまだ優れていない」と指摘していたり、Hacker Newsでも「オープンモデルはトレーニングやデータを公開しているものであり、無料でダウンロードできますが、無料で実行できるものではない」と指摘されていたりと、反対意見も挙がっています。
The Washington Postは中国のオープンモデル規制に「実際には歓迎すべき正当な競争」と異議を唱えています。The Washington Postによると、AIモデルをオープンに公開することは技術的理念の表れでも地政学的な戦略でもなく、30年にわたり大規模で収益性の高い企業を築き上げてきた実績があるビジネス戦略であるとのこと。そのため、オープンモデルのAIをライセンス制で管理すべき脅威と見なすのは、競争というごく普通の営みを取り締まるべき脅威と誤解しているのだと指摘しています。
20年以上にわたりAI開発に携わってきたソフトウェア開発者のペリー・メッツガー氏は、Kimi K3のリリースでテクノロジー株が下落したことに対し、「根本的な変化は何もありません。問題は、投資家の大多数が、これらのシステムが実際に何をしているのか、企業がどのように収益を上げているのか、あるいはニュースが何を意味するのかを全く理解していないことです」とThe New York Timesに対し語りました。
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in AI, Posted by log1e_dh
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