株のオンライントレードはどのような流れで取引されているのか?
オンライントレードの普及により、クリックするだけで株を買ったり売ったりできるようになりましたが、投資経験はあっても「株の売買が一体どんな仕組みで行われているのかはよく知らない」という人は多いはず。そこで、アメリカの電子株式取引所・NASDAQでチーフエコノミストを務めるフィル・マッキントッシュ氏が、ネット注文した株取引がどのような過程で決まるのかを解説しています。
An Intern’s Guide to Trading | Nasdaq
https://www.nasdaq.com/articles/an-interns-guide-to-trading-2021-07-01
マッキントッシュ氏によると、オンライントレードにおける全ての注文はブローカーと呼ばれる仲介人によって処理されているとのこと。中でも、一般的な個人投資家が行う小口の取引であるリテール注文は、リテールブローカーからホールセラー(卸売業者)に注文が送られる形で始まります。こうした個人投資家の取引は、前述の通り少額なことが特徴で、注文の92%が2万ドル(約220万円)以下とのこと。
一方、投資会社などの機関投資家に投資を任せるミューチュアル・ファンドでは、数百万株に及ぶ大規模な取引が行われます。一度に全ての注文を処理すると取引コストがかさむため、多くの場合はコンピューターアルゴリズムを用いて注文を細分化させる方法がとられています。
こうして行われた注文は、取引所に送られることもあれば、ダークプールなどの取引所外取引で処理されることもあります。最新のデータによると、アメリカで取引される全株式の43%が取引所外取引で行われているとのこと。つまり、アメリカでトレードされている株の約半分が、アメリカに16ある取引所の中で処理されているということになります。
取引所に送られた投資家たちの注文は、証券情報処理者(SIP)によってとりまとめられ、最も投資家に有利な価格である全米最良気配(NBBO)として公表されます。全米市場システム(NMS)のルールでは、あらゆる取引はNBBOより不利になってはならないと定められていることから、NBBOは取引所での売買だけでなく取引所外取引にとっても重要なベンチマーク価格となります。
取引所での取引は、投資家がどのような形で注文したかによって少し異なる経過をたどります。代表的な注文方法の1つが指値注文で、これは株の価格を指定して行う注文のこと。例えば、株を買う場合は買値を、株を売る場合は売値を売買する数量とともに指定します。そして、もう1つ成行注文は、指値注文とは異なりいくらで売買するかを決めず、数量だけを指定して行う注文です。
成行注文で取引を行うと、コストは高くつくものの、速やかに約定され売買が成立します。すぐに取引が終わるということは後に続く取引もスムーズになるということなので、特に大規模な取引を行う特にミューチュアル・ファンドにとっては重要になります。ただし、価格を指定しないので、想定外の価格で約定するリスクがあります。
一方で指値注文を行うと、大抵の場合、取引待ちをしている多くの注文の最後尾に回されることになるので取引は遅くなり、また場合によっては約定しないこともあります。例えば、買おうと思っている銘柄の株価が指値より高く推移した場合、また注文をし直さなければならなくなったり、結局買えなかったりします。こうしたリスクをコストとみなす場合、機会費用と呼ばれます。このようなケースがあるため、マッキントッシュ氏は「指値注文でトレードするにあたっては、最初に成行注文をするより多くのコストがかかることもあります」と述べました。
「需要が増えれば価格も上がる」という市場原理がある通り、トレードを素早く行えば行うほど、またトレードの規模が大きくなればなるほど、コストが増大します。一方、前述のような機会費用もコストに含めると、トレーダーにとっては「取引をじっくりやってもコストがかかる」というジレンマが発生します。このジレンマに対してどんな選択を行えばいいかは、銘柄によって異なります。
銘柄の違いの代表的なものは、時価総額です。時価総額が大きな企業の株は、その大きさに比例するように大量に取引されます。つまり、成行注文がより素早く実行されます。こうした銘柄の特徴は「流動性が高い」と表現されることがあります。また、銘柄の価格も重要です。アメリカの株は1セント単位で注文できますが、1ドル(約110円)未満の株と1000ドル(約11万円)の株では、1セントの重みも変わってくるからです。
マッキントッシュ氏はこうした株取引の流れを、「複雑だという印象を受けるかもしれませんが、実際のところ最近のトレードはほとんどコンピューターが行っており、人間のトレーダーが直面する複雑な問題のほとんどを解決してくれます」とコメントしました。
・関連記事
人工知能による自動化が進むゴールドマン・サックス、人間のトレーダーは600人から2人へ - GIGAZINE
Twitterを使って株価を不正操作する情報戦が行われていた - GIGAZINE
コンピューターが自動で売買取引を行う「アルゴリズム取引」とは - GIGAZINE
世界初の「高頻度取引」はどのようにして始まったのか? - GIGAZINE
インサイダー取引は予想以上に株式市場に横行しているという実態が判明 - GIGAZINE
・関連コンテンツ