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ユーロ2020の決勝で敗退したイングランド代表の黒人選手たちが人種差別の被害に


新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより開催が延期されていたUEFA EURO 2020(ユーロ2020)の決勝戦・イタリア対イングランドの試合が2021年7月11日にイギリス・ロンドンのウェンブリー・スタジアムで開催されました。サッカーの母国であるイングランドにおいて「サッカーの聖地」と称されるスタジアムでの決勝開催ということで、国民の期待はかつてないほどに高まっていたものの、延長・PK戦の末、イタリア代表が勝利を収めました。55年ぶりの主要大会優勝が期待されていたイングランド代表において、PK戦のキッカーを務めてミスキックをして意図せず敗戦の責を問われることとなってしまった複数の黒人選手が、サッカーファンから人種差別の被害を受けており、大きな問題となっています。

Facebook, Twitter under fire after England players face racial abuse
https://www.cnbc.com/2021/07/12/facebook-twitter-under-fire-after-england-players-face-racial-abuse.html

After Defeat, England’s Black Soccer Players Face a Racist Outburst - The New York Times
https://www.nytimes.com/2021/07/12/world/europe/england-european-championships-racism.html

BCS calls for social media platforms to verify users to curb abuse | IT PRO
https://www.itpro.co.uk/marketing-comms/social-media/360190/bcs-calls-for-social-media-platforms-to-verify-users

Boris Johnson condemns ‘appalling’ racist abuse of England players | Euro 2020 | The Guardian
https://www.theguardian.com/football/2021/jul/12/fa-condemns-racist-abuse-england-players-social-media-euro-2020-final

サッカーイングランド代表チームのホームスタジアムであり、「サッカーの聖地」と称されるウェンブリー・スタジアムで行われたイタリア対イングランドによるユーロ2020の決勝戦は、PK戦(3対2)の末イタリア代表の勝利で終わりました。

決勝 HL│イタリア vs イングランド│UEFA EURO 2020TM サッカー欧州選手権【WOWOW】 - YouTube


イングランド代表側のキッカーを務めたマーカス・ラシュフォード選手(3番手)、ジェイドン・サンチョ選手(4番手)、ブカヨ・サカ選手(5番手)が3連続でPKを失敗したため、決勝戦後からTwitterやFacebookといったSNS上には3選手への人種差別的なコメントが大量にあふれることとなりました。

これを受け、イングランドにおけるサッカーを統括するFAが、「FAはあらゆる形態の差別を強く非難しているため、ソーシャルメディア上でイングランド代表選手に向けられた人種差別的コメントには驚きを隠せません。このような嫌悪感を抱かせる行為を行った者は、チームの一員として歓迎されるべきではありません。我々は被害を受けた選手たちを全力でサポートするとともに、関係者に対して可能な限り厳しい処罰を求めていく所存です」という公式声明を出す事態にまで発展しました。


決勝でイングランド代表のゲームキャプテンを務めたハリー・ケイン選手は、「今大会で素晴らしい活躍をした3人の若者は、困難な状況にあっても勇気を持って立ち上がり、PKのキッカーを務めました。彼らには昨晩から浴びせられているような下品な人種差別的罵倒ではなく、サポートや支援を受ける資格があります。ソーシャルメディアで誰かを罵倒するなら、あなたは『イングランド人』ではありません。イングランド代表のファンでもないし、我々には必要ない存在です」とツイートし、人種差別の標的となった3選手へのサポートを公言しています。


さらに、イギリスのボリス・ジョンソン首相も「イングランド代表チームはソーシャルメディア上で人種差別を受けるのではなく、ヒーローとして称賛されるに値します。人種差別を投稿する人々は自分自身を恥じるべきです」とツイートし、人種差別的なコメントの投稿を批判しています。


なお、2021年4月にイングランドではサッカーやラグビー、クリケットといったスポーツのプロ選手たちが、「SNSの人種差別や性差別に対する対策は不十分だ」として、各種サービスをボイコットする抗議活動を行いました。そのため、CNBCは「SNS上で人種差別が起きたことで、テクノロジー企業による対応に再び疑問が投げかけられることとなりました」と言及しています。

イギリスではインターネット上の有害なコンテンツが急増していることを受け、コンテンツの検閲を正しく行えていない企業を取り締まるための「オンライン安全法案」が検討されています。この法律に違反した場合、最大1800万ポンド(約28億円)または年間収益の10%のいずれか高い方が罰金として科されることとなります。

イギリスの国会議員であるオリバー・ダウデン氏は、「母国の英雄的な選手たちへの人種差別的な虐待に対する怒りを覚えています。ソーシャルメディア企業は人種差別に対処するためにプラットフォームを強化する必要があります。失敗した場合、新しいオンライン安全法案により罰金が科せられます」とツイートし、イギリス政府の取り組みをアピールしています。


さらに、保守党所属の国会議員であるダミアン・コリンズ氏は、「悪意のある表現は許可しないとFacebookはサービスポリシーで言及しています。イングランド代表選手に対して罵詈雑言を吐いたFacebookやInstagramのアカウントのうち、削除されたものはどのくらいあるでしょうか?そして、Facebookが導入しているという人種差別を防止するためのツールはどのくらい機能したでしょうか?」とツイートし、Facebookに対して人種差別への対策がどの程度効果を発揮したのかを問いかけています。


なお、CNBCがFacebookとTwitterに問い合わせたところ、Facebookの広報担当者からは「誰も人種差別的な虐待を経験する必要はありません。我々はInstagram上で人種差別が起きることを望んでいません。昨夜、イングランドのサッカー選手に向けられた人種差別的なコメントや、それらを投稿したアカウントを即座に削除しました。ルールに違反するユーザーに対しては引き続き行動を起こしていきます」という返答が得られたそうです。


同じく、Twitterの広報担当者も「イングランド代表選手に向けられた人種差別的なコメントは、Twitter上では絶対に受け入れられないものです。過去24時間で機械学習ベースの自動化された検閲ツールと、人間による人力での検閲を組み合わせることで、1000を超える人種差別ツイートを発見し、削除することに成功しました。また、Twitterのルールに違反した多数のアカウントを永久凍結しています」と回答し、独自のテクノロジーにより多くの不快なツイートを削除することに成功したとしています。

なお、イングランド代表選手が人種差別を受けているのはインターネット上だけではありません。イギリス・マンチェスターにあるラシュフォード選手の壁画には、侮辱的なメッセージが書き足されていることが明らかになっています。


・おまけ
プレッシャーのかかるPK戦で3番手のキッカーを務めたラシュフォード選手は23歳、4番手のサンチョ選手は21歳、5番手のサカ選手は19歳だったということで、「よりベテランの選手がその責任を負うべきだった」という意見もあります。

歯に衣着せぬ物言いで知られる元アイルランド代表選手のロイ・キーン氏は「もしも自分がスターリングやグリーリッシュなら、そこに座って幼い子ども(サカ)にPKのキッカーを任せることはできなかっただろう」と、一部の選手を批判。これに対してジャック・グリーリッシュ選手は、自身のTwitter上で「蹴りたいと言ったさ!!!!ギャファー(イングランド代表監督の愛称)はユーロ2020を通して非常に多くの正しい決断を下してきて、そして決勝の夜の決断に至ったんだ!僕がPKのキッカーを務めたくなかったと言われる筋合いはない……」とツイートで反論しています。

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in メモ,   動画, Posted by logu_ii

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