サイエンス

女性が男性よりも長生きする理由とは?


厚生労働省の簡易生命表によると、令和元年(2019年)の女性の平均寿命は87.45年で、男性の81.41年を6年以上も上回っています。この傾向は日本以外の国々でも同様とのことで、科学系メディアのLive Scienceは女性の平均寿命が男性よりも長い理由をまとめています。

Why do women tend to outlive men? | Live Science
https://www.livescience.com/why-women-outlive-men.html

一般的に女性ホルモンと呼ばれるエストロゲンと、男性ホルモンの一種であるテストステロンの分泌量を女性と男性で比較すると、女性は男性より多くのエストロゲンを分泌し、少ないテストステロンを分泌します。エストロゲンは心臓病などから体を保護する働きが認められており、反対にテストステロンは乳がんや子宮頸がん、前立腺がんなど、複数の病気の発症リスクを高めることが判明しています。また、南デンマーク大学で人口統計学を研究するバージニア・ザルリ氏は「テストステロンは、危険な行動を引き起こしたり、高い攻撃性と関連したりしていることが知られています」と述べ、女性の寿命の長さにテストステロンの分泌量の少なさが関係していると指摘しています。


ザルリ氏は男女の染色体の違いも寿命の長さに関係していると主張しています。女性は母親と父親の両方からX染色体を受け継ぎますが、男性は母親からX染色体を受け継ぎ、父親からY染色体を受け継ぎます。このため、血友病Duchenne型筋ジストロフィー病などのX染色体に生じた変異が原因となる疾患は、女性の場合は両方のX染色体に変異が生じない限り発症しませんが、男性の場合は1つのX染色体に変異が生じていれば発症するため、男性の方がこれらの疾患を発症する可能性が高くなります。

1890年~1995年にかけて1万1000人に及ぶカトリック教会の修道士と修道女を対象に行われた調査では、成人してからの平均余命が女性の方が男性より約1年長いことが明らかになりました。ザルリ氏は「聖職者の生活様式は基本的に同一で、男女共に危険な行動を避けています。そのため、この1年の差は生物学的な理由によるものでしょう」と指摘しています。加えて、「調査が成人した男女を対象に行われていることを加味すると、生物学的理由による平均寿命の差は約2年だと考えられます」と述べています。

さらにザルリ氏は「平均的に男女の寿命差は4~5年です。生物学的理由による差が2年だとすると、残りは社会的要因によるものです」と主張しています。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)調査では男性は女性と比べて過剰にアルコールを摂取する可能性が2倍に及ぶことが判明しています。また、世界の男性の35%が喫煙しているのに対して女性の喫煙者はわずか6%だという調査結果も報告されています。さらに、女性は男性と比べて33%多く医療機関での検査を受診することも明らかになっています。ザルリ氏はこれらの社会的要因が男女の寿命差に影響していると主張しているわけです。


しかし、男女の寿命差は広がり続けているわけではありません。1970年代からアメリカにおける男女の寿命差は増加傾向にありましたが、2005年ごろには寿命差が減少し始めたとのこと。ザルリ氏はこの原因について「女性が喫煙する機会が増加したことが原因と考えられます」と述べています。

なお、厚生労働省の(PDFリンク)データによると、日本における男女の平均寿命差は昭和25年(1950年)から増加傾向にありましたが、平成17年(2005年)の男女差6.96年を境に差が減少傾向に転じています。

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in サイエンス, Posted by log1o_hf

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