「血中の鉄分濃度」が人間の寿命に影響を与えているという研究結果
人々の寿命を左右する要因に関する研究は非常に多く、「性格による睡眠時間の違い」「人生の目的を持っているかどうか」といった事柄が、人々の寿命に影響を与えていることがわかっています。イギリスのエディンバラ大学などの研究チームが行った新たな研究から、「血中の鉄分濃度」が人間の寿命に影響を与えている可能性があると判明しました。
Multivariate genomic scan implicates novel loci and haem metabolism in human ageing | Nature Communications
https://www.nature.com/articles/s41467-020-17312-3
Blood iron levels could be key to slowing ageing | The University of Edinburgh
https://www.ed.ac.uk/news/2020/blood-iron-levels-could-be-key-to-slowing-ageing
Study of Over 1 Million People Finds Intriguing Link Between Iron Levels And Lifespan
https://www.sciencealert.com/a-study-of-1m-people-finds-a-strange-link-between-iron-levels-and-long-life
研究チームは遺伝情報と寿命との関連を調査するため、3つのデータベースからなる100万人を超える人々の遺伝情報と、生物学的老化に関連する「寿命」「病気をせずに過ごした『健康寿命』」「非常に長命な人の傾向」について焦点を当てて分析を行ったとのこと。
分析の結果、研究チームは10のゲノム領域が長寿と関連していることを突き止めました。また、これらの領域が「体内における鉄分の代謝」に関わっていることも判明したとのことで、研究チームは「血液中の鉄分濃度が高すぎると早死にのリスクが高くなる」と指摘しています。
論文の筆頭著者であるPaul Timmers氏は、「今回の発見は血中の高レベルの鉄分が私たちの健康寿命を減らし、血中の鉄分濃度を抑えることで加齢に伴うダメージを防ぐことができると強く示唆しているため、私たちはとても興奮しています。鉄分の代謝に関する私たちの発見は、『高濃度の鉄分を含む赤身肉を食べることが、心臓病などの加齢に伴う状態と関連している』ことの理由を説明するかもしれないと推測しています」とコメントしました。
相関関係は必ずしも因果関係を意味するものではないものの、研究チームは「メンデルランダム化」という統計学的手法を用いて、観察された相関関係から因果関係を推測する試みも行っています。その結果、「血中の鉄分濃度が寿命に影響を及ぼす」という因果関係が存在することが示唆されたそうです。
今回、研究チームが長寿と関連することを特定した10のゲノム領域のうち5つは、以前はゲノム全体のレベルで重要であると強調されていませんでした。その一方で、アポリポタンパクE(APOE)やFOXO3などの一部の遺伝子は、以前から人間の老化プロセスと健康にとって重要であると指摘されてきました。
また、血中の鉄分濃度はパーキンソン病や肝臓病などの加齢制疾患や免疫機能の変化と関連付けられており、今回の研究結果は以前の発見と合致するものです。「加齢制疾患や有名な老化遺伝子座であるAPOE、FOXO3などとの関連から、私たちが人間の老化プロセスをある程度把握していることは明らかです」と研究チームは述べています。
今回の研究は血中の過剰な鉄分の蓄積や、適切に鉄分をコントロールできなくなることが、人々の寿命や健康寿命に関連する可能性を示唆します。依然として鉄分代謝と寿命との関連についての研究は初期段階ですが、将来的には「血中の鉄分濃度を下げて潜在的な寿命を伸ばす薬」の開発も視野に入っているとのこと。
研究チームのJoris Deelen氏は、「私たちの究極の目的は、老化がどのように制御されているのかを発見し、老化中に健康を増進する方法を突き止めることです。寿命、健康寿命、長寿に関連していることが判明した10のゲノム領域は、全てがさらなる研究の刺激的な候補となります」と述べました。
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