熱中症による死者の3人に1人は「地球温暖化」が原因で命を落としたとの研究結果
気候変動などがもたらす気温の上昇は人体にさまざまな影響を及ぼすことが知られており、とりわけ熱中症は死に至るリスクもある重大な症状です。全世界における熱中症の死亡例と気候変動の関係を調べた研究により、1991年~2018年に発生した熱中症の死者のうち37%が「地球温暖化がもたらした気温の上昇が原因」だという可能性が示されました。
The burden of heat-related mortality attributable to recent human-induced climate change | Nature Climate Change
https://www.nature.com/articles/s41558-021-01058-x
Global warming already responsible for one in three heat-related deaths | LSHTM
https://www.lshtm.ac.uk/newsevents/news/2021/global-warming-already-responsible-one-three-heat-related-deaths
気候変動が人の健康にもたらす影響については、これまでさまざまな研究が行われていますが、熱中症と気候変動の関係を具体的に調べた大規模な研究はこれまで行われてきませんでした。そこで、ロンドン大学公衆衛生学・熱帯医学大学院のアントニオ・ガスパリーニ教授らの研究チームは、日本を含む世界43カ国732地点から得られたデータを用いて、1991年~2018年の間に発生した「人為的な温暖化による追加的な気温上昇が原因となった死者数」を算出するという研究を行いました。
今回の研究ではまず、732地点の気象データと死因のデータを取得し、各地点における気温と死亡率の関係を定量化しました。次に、人為的な気候変動がある場合とない場合における死亡率をシミュレーションして比較し、自然に発生した熱中症における死者数と、温暖化の影響により発生した熱中症の死者数を算定しました。
その結果、世界43カ国における熱中症の死者の内、37%が温暖化による気温上昇が原因だった可能性があることが分かりました。「熱中症の死者数のうち地球温暖化に起因するもの」の割合は中南米が最も高く、特にエクアドルやコロンビアでは最大76%に及びました。また東南アジアでも48%~61%と、熱中症の死者の半数が地球温暖化によるものだったと推定されるとのことです。
この研究では、都市ごとの死者数も算出しており、チリの首都サンティアゴでは地球温暖化による追加的な死者数は年間136人で、同都市における熱中症による死者のうち実に44.3%が温暖化によるものでした。同様に、東京では156人(35.6%)、ギリシャのアテネでは189人(26.1%)、イタリアのローマでは172人(32%)、スペインのマドリードでは177人(31.9%)、タイのバンコクでは146人(53.4%)、イギリスのロンドンでは82人(33.6%)、アメリカのニューヨークでは141人(44.2%)、ベトナムのホーチミン市では137人(48.5%)が、気候変動による熱中症で死亡したと考えられています。
ガスパリーニ教授は、「この研究結果は、気候変動が将来壊滅的な影響を及ぼすどころか、世界各地の人がすでに人為的な気候変動がもたらす悲惨な結果に直面しているということを明確に示しています。私たちは、ただちに行動を起こさなければなりません」とコメントしました。
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