「監視」を元にした広告は禁止されるべきという批判

近年のインターネットにおけるデジタル広告は、「ユーザーの行動を追跡すること」をベースに構築されています。このためプライバシーを侵害するという指摘が多く、広告企業であるGoogleは、既存の仕組みを廃止し新たな広告の仕組みを作り出そうとしています。しかし、新しい広告の仕組みでも依然として「ユーザーの行動を追跡する」という慣行が残ることから、「そもそも監視ベースの広告を廃止すべきのだ」という主張が強まっています。

Open letter: Ban surveillance-based advertising | Vivaldi Browser
https://vivaldi.com/blog/letter-ban-surveillance-based-advertising/

インターネットにおけるユーザーの行動を追跡し、興味・関心を割り出して、その情報をもとに広告を表示することをターゲティング広告といいます。ターゲティング広告は過去に存在した広告の表示方法よりもパフォーマンスがよいといわれることから、近年は広告業界で広く利用されていました。しかし、サードパーティーCookieを利用したターゲティング広告は「あまりにも広範にユーザーの行動を追跡するためプライバシーを侵害する」と指摘されたことから規制されつつあり、GoogleもサードパーティーCookieに代わる新しい広告の仕組みを開発しつつあります。

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また、Google以外にも多くのアドテク企業が新たなターゲティング広告の仕組みを作り出そうとしています。

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このような新たな仕組みの多くはサードパーティーCookieを利用しませんが、ユーザーの行動追跡を利用したターゲティング広告自体は引き続き行うものです。このため、サードパーティーCookieを利用するかどうかにかかわらず、そもそもターゲティング広告自体をやめるべきだとする議論も存在します。

2021年6月23日には消費者権利団体・公民権団体・NGO・研究者・プライバシー専門家らが共同して「押しつけがましくプライバシーを侵害する監視ベースの広告を取り締まるべき」だと規制当局に求めました。

TIME TO BAN SURVEILLANCE-BASED ADVERTISING
(PDFファイル)https://www.forbrukerradet.no/wp-content/uploads/2021/06/20210622-final-report-time-to-ban-surveillance-based-advertising.pdf

プライバシー重視のウェブブラウザを開発するVivaldiも、この動きを支援することを発表。監視ベースの広告はプライバシーを侵害するだけではなく、ビジネス環境にとっても有害だとVivaldiは指摘します。監視ベースの広告は競争を阻害し、支配的な企業を作りやすいというのがVivaldiの主張。デジタル広告のサプライチェーンは複雑化しており、その中で支配的な企業が定着すると、広告主とコンテンツ作成者およびパブリッシャーの収益が奪われるとのこと。

加えて、一般消費者が複雑なデジタル広告の分野で「いい企業」と「悪い企業」を見分けることは困難であることから、正しい行動を行っている企業であっても、悪い企業の慣行による悪影響を受けることが考えられます。このようなサイクルによって、消費者と企業に害がおよび、民主主義の基礎が損なわれる可能性があるとVivaldiは述べました。

「広告はオンラインのコンテンツ作成者やパブリッシャーにとって重要な収入源ですが、これは『適切な人に適切な広告を表示する』ことを目的とした大規模な商用監視システムを正当化するものではありません」とVivaldiは締めくくりました。