サイエンス

3万年前に使われたたいまつの素材は何だったのか?


人間の生活に欠かせない火は現代でこそ自由に扱えるものの、我々の祖先はかつてはたき火やたいまつなどといった限られた手段で火を扱っていました。そんな大昔の火を扱う道具について、約3万年前から始まる後期旧石器時代にはどんな素材が使われていたのか、考古学者が実験により「当時の理想的な照明」を再現して推測しました。

The conquest of the dark spaces: An experimental approach to lighting systems in Paleolithic caves
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0250497

Clever Experiment Reveals How Our Ancestors Used Lighting Sources in Caves
https://www.sciencealert.com/scientists-recreate-three-types-of-ancient-lighting-to-understand-paleolithic-cave-dwellers

コルドバ大学の考古学者であるアンヘレス・メディナ氏らは、フランスにある後期旧石器時代の洞窟「ブルニケル洞窟」で採取された木炭や骨などの残留物を調査。当時の植生や気候などを考慮してさまざまな素材を集め、実際に洞窟内で火をおこして照明としての使い勝手を実験することで、「探索」「居住」などの用途別に最適な照明の素材を割り出そうとしました。

メディナ氏らが用意した素材は、ツタ・ジュニパーオークバーチの4種類の木材と松やに、ウシとシカの骨髄からとれる脂です。メディナ氏らはこれらの素材を組み合わせて5種類のたいまつと2種類のランプ、1つのたき火を作り、居住に適した洞窟で実際に火を付けて燃焼時間や明るさなどを調べました。

8種類のうち最も強い光を発したのは「乾燥させたジュニパー772g・乾燥させたバーチ30g・ツタ50g・シカの脂60g」で作ったたいまつだとのこと。このたいまつは61分間光を発し、平均照度は21.94ルクスでした。5種類のたいまつは平均して41分間燃え続け、ほぼ6メートル先まで照らすことができましたが、煙が多く出ることや天井にぶつけてしまうことなどが問題として挙げられたとのこと。


また、乾燥させたジュニパー・脂・松やにで作ったランプは平均照度が3.17ルクスと暗かったものの、煙をあまり出さず1時間以上安定した明るさを保っていたとのこと。乾燥させたジュニパーとオークで作ったたき火は平均照度が19.2ルクスに到達したものの、白い煙が発生して洞窟内に充満してしまったとのことです。メディナ氏らは「洞窟内で長期滞在する場合は気流を適切に把握することが大切です」と述べています。


他にもメディナ氏らは「用意した照明で洞窟の天井付近に描かれた壁画を見ることができるか」ということを調査したところ、たいまつやランプを手に持って壁画に近づいた人は見ることができても、地面に立っている人はほとんど壁画を見ることができないということが分かったとのこと。メディナ氏らは「たき火は空間全体を照らすために計算されて置かれていたと考えられます。たいまつは道を移動する際の最適の方法であることは明らかで、壁画までの道に実際に木炭の痕跡があることも偶然の一致ではないようです」と記しています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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