サイエンス

人類が「火」を使い始めたのはいつから?


人類は「火」を使うことで他の動物とは違う行動を取れるようになりました。「火」と共に歩んできた人類ですが、果たしていつから火を使い始めたのか、山火事から火をもらった証拠ではなく「自ら火起こしした証拠」はいつから存在するのかなどの疑問について、地球科学者のクレイトン・マギル氏が解説しました。

Organic geochemical evidence of human-controlled fires at Acheulean site of Valdocarros II (Spain, 245 kya) | Scientific Reports
https://doi.org/10.1038/s41598-023-32673-7

Humans were using fire in Europe 50,000 years earlier than we thought – new research
https://theconversation.com/humans-were-using-fire-in-europe-50-000-years-earlier-than-we-thought-new-research-205807

人類が火と関わっていたという証拠については、古いもので150万年前のものが見つかっています。猿人の化石が多数見つかってきた南アフリカの洞窟「スワルトクランス」で発見された化石の中からは150万年前から100万年前の動物の焼けた骨と一緒にヒト科の動物の骨が見つかっており、こうした化石が人間と火との関連を示す最も古い証拠であると考えられているとのこと。

しかし、同じ遺跡でヒト科の遺物や焼けた骨が見つかったからといって、それが同時期のものであるかどうかは明らかではなく、人類が火をコントロールしていたかどうかも分かりません。自然に発生した山火事を利用していたものではなく、人類が意図的に火を起こし、火の範囲や温度などを管理していた証拠も重要視されるのです。

人類が火を使ったという最も古い証拠が発見されたのは、イスラエルにある約79万年前の遺跡、Gesher Benot Ya'aqovです。この場所では、炭化した植物と焼けた石器が並んでいるのが確認されています。イスラエルでは他にも42万年前から20万年前の証拠が発見されたケセム洞窟や、約34万年前のものが発見されたタブン洞窟などがあり、その両方に人類が火を使っていた証拠が残されていました。こうした証拠は人類が火を管理していたことを示唆するものですが、燃料の調達から火起こしの準備、なぜ火を管理していたのかという「動機」との関連性を立証することは困難だそうです。


2023年5月18日にマギル氏らが公開した研究論文の中で立証されたのは、こうした「人類が明確な意図を持って火を管理していた」というものでした。

マギル氏らのチームは、25万年前に存在したとされるスペインの遺跡「Valdocarros II」で調査を実施。人類の祖先が火をコントロールし、使用していた証拠を発見しました。これにより、ヨーロッパで人類が火を管理していたという最古の証拠が、既存の証拠から5万年前にさかのぼることになりました。


調査によると、朽ちかけた松から見つかった「脂質」のバイオマーカーが、その松が燃料として使われたことを示していたそうです。さらに、不完全燃焼で生じる「ポリアロマティックハイドロカーボン」と呼ばれる分子の存在も証拠を裏付けており、これを分析すると、Valdocarros IIで見つかった松は350度前後の低温で比較的短時間に焼かれたことが分かるとのこと。

もう少し高い温度であればたき火代わりに暖をとっていたのではと推測できますが、350度という温度で暖をとっていたとは考えにくいとのこと。高温のたき火は調理には向かないことから、松を使って温度を低く保ち、調理に使っていたのではとマギル氏らは推測しています。


マギル氏らが発見した証拠は、世界的に見て最古のものでも、最初に火を管理した人類を示すものでもありませんが、火を管理していたことを示す複数の証拠に満ちていることから、「人類の進化を考える上で、重要な指標となる」とマギル氏は解釈しています。

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in サイエンス, Posted by log1p_kr

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