サイエンス

食品のカロリー表記は「食べた人間のうんちから失われた熱量」を計算した実験がベースになっている


スーパーやコンビニで販売されている食品から、外食チェーンが提供するメニューに至るまで、今やほとんど当たり前のように記されるようになった「カロリー表記」ですが、このカロリーを計算する方法は間違ったものであると科学雑誌のNew Scientistが指摘しています。

Calories on food packets are wrong – it's time to change that | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/mg25033392-800-calories-on-food-packets-are-wrong-its-time-to-change-that/

食品のカロリーは、1824年にフランスの化学者であるニコラ・クレマン氏が「1キログラムの水の温度を1℃上げるのに必要なエネルギー量」を「1カロリー」と定義しました。ただし、現在では「1カロリー=1cal=1グラムの水の温度を1℃上げるのに必要なエネルギー量」であり、クレマン氏が定義した「1カロリー」は現在の「1kcal」となります。


現在の世の中で広く用いられているカロリー計算は、1880年代後半にウェズリアン大学のウィルバー・アトウォーター博士が「人間が消化できるさまざまな食品の割合」を把握するために行った研究をベースにしています。

アトウォーター博士は食べ物のカロリー計算のために、「ボンベ熱量計」と呼ばれる燃焼熱を測定するための計器を使用。ボンベ熱量計は、純粋な酸素で満たされた高圧の密閉容器で、この中で燃焼により放出された熱を測定するというものです。

アトウォーター博士は、まず食べ物を燃焼させてその燃焼熱を測定。次に、人間の被験者に食べ物を与え、その後に出した糞便の燃料熱を測定。そして、食べ物と糞便の燃焼熱の差を計算することで、被験者が体内に吸収したカロリーを計算しました。


アトウォーター博士は1900年に糞便を燃やしてカロリーを計算する方法を世界に発表しました。この手法により、各栄養素のカロリーは脂肪は1gあたり9kcal、炭水化物は1gあたり4kcal、タンパク質は1gあたり4kcalと定義され、この定義は120年以上が経った今でもカロリー計算の基礎となっています。

しかし、アトウォーター博士の計算が間違っていることは1970年代には明らかになっています。アトウォーター博士の計算方法は、体内で消化できない食物繊維や、タンパク質から抽出されて尿中の尿素として排泄される窒素などは考慮に入れているものの、代謝中に放出される熱は考慮されていません。この熱はタンパク質や脂肪、炭水化物といった栄養素を体が必要とするアミノ酸や脂肪酸、ブドウ糖に変換するために必要なエネルギーです。

例えばタンパク質の場合、100kcalのタンパク質を摂取した場合、30%は熱に変換されるため、実際に体内に吸収されるのは70%の70kcalのみ。脂肪の場合は98%、炭水化物の場合は90%が体内に吸収されます。この吸収率の違いがタンパク質が他の栄養素よりも満腹感を覚える理由です。


2001年、コンサルタントのGeoffrey Livesey氏が「正味代謝可能エネルギー」という用語を作り出し、食品ラベルに書かれたカロリー表記を新しいものにすることを提案しました。しかし、この提案は食品業界に無視され、広く普及することはありませんでした。

高タンパク質の食事が肉・乳製品ともに心疾患のリスクを増加させることが明らかになっているように、食事が非感染性疾患に大きく関連していることは明らか。食事の品質をより良く理解し、非感染の疾患を防ぐには、カロリー表記がより正確なものになる必要があるとNew Scientistは指摘しています。

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in サイエンス,   , Posted by logu_ii

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