カラスは「ゼロの概念」を理解している
5世紀ごろに初めて登場したとされる「ゼロ(0)」の概念は、数学の分野に劇的な変化をもたらしました。ゼロを1つの数として認識できるのは人間をはじめ、アカゲザルやミツバチといった限られた生物のみだとされてきましたが、新たにカラスもゼロの概念を認識している可能性があることが研究により明らかになりました。
Behavioral and Neuronal Representation of Numerosity Zero in the Crow | Journal of Neuroscience
https://www.jneurosci.org/content/41/22/4889
Crows understand the 'concept of zero' (despite their bird brains) | Live Science
https://www.livescience.com/crows-understand-concept-of-zero.html
エバーハルト・カール大学テュービンゲンのMaximilian Kirschhock氏らは、神経学と動物行動学の両方の観点からカラスがゼロの概念を理解できるかどうかを調査しました。Kirsvhhock氏らはまず2羽のハシボソガラスに対し、目の前のディスプレイに0~4個の黒点が2回続けて表示される様子を見せ、数が同じならばディスプレイをつつくか頭を動かし、異なる数ならば静止するよう訓練しました。何度かの試行の結果、2組の点の差が大きいほどカラスはより正確に反応することがわかりました。
言い換えると、2個の黒点と3個の黒点が続けて表示された場合、1個の黒点と4個の黒点が続けて表示された場合に比べてカラスは間違えることが多かったということ。共同研究者のAndreas Nieder氏は「この現象は数的距離効果として知られており、同様の現象は人間やサルでも見られます」と述べています。また、カラスは黒点がない場合と1個の場合を混同することが多かったことから、Kirschhock氏らは「カラスは『黒点がない』ということをただ『何もない』と認識しているのではなく、実際には数値として扱っていることを示しています」と述べています。
また、黒点を表示させる実験中には、カラスの高度な認知機能をつかさどる脳外皮と呼ばれる部分にワイヤーを接続し、ニューロンの活動が記録されていました。Kirschhock氏らが2羽に対して合計500個以上のニューロンからデータを取った結果、カラスが認識した数字によってニューロンが活発になる部分が違うということが分かりました。例えば2個の黒点を認識した時に活発になる部位もあれば、4個の黒点を認識した時に活発になる部位もあり、同様に黒点がない場合に活発になる部位も存在したとのこと。この「ゼロ」を認識するニューロンは、ディスプレイ上の黒点が増えるほど活発でなくなったということです。
Kirschhock氏らは「以上のことは、カラスがゼロの概念を理解していることを示唆しています」と結論付けています。Nieder氏は「動物がゼロの概念を理解しているのかどうかを調べるのは少しおかしなことのように思えるかもしれません。しかし、鳥類と哺乳類が共通の祖先から分裂したことを考えると、2種が共通する認知能力を持っているという事実は注目に値します」と述べています。
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