ミツバチは「ゼロ」の概念を理解できると判明
by Smudge 9000
「0(ゼロ)の発見」は数学の世界だけでなく科学の世界を広げ、人類の発展に大きく寄与した重要な科学的偉業です。人間など限られたごく一部の生物にのみ理解できると考えられてきた「ゼロの概念」について、ミツバチも理解できることが発見されています。
Numerical ordering of zero in honey bees | Science
http://science.sciencemag.org/content/360/6393/1124
Honeybees zero in on nothing - RMIT University
https://www.rmit.edu.au/news/all-news/2018/jun/honeybees-zero-in-on-nothing
Honey bees can understand the surprisingly complex concept of zero - Vox
https://www.vox.com/science-and-health/2018/6/7/17437640/bees-zero-math-humans-science
「ゼロの概念」を理解できるのは人間を含むホ乳類などごく一部の「エリート」に限られてきました。そのエリートクラブに「ミツバチ」が加わることになったという研究が、科学誌Scienceで発表されました。
ミツバチがゼロの概念を理解できるのかを検証したのはロイヤルメルボルン大学(RMIT)のスカーレット・ハワード博士らの研究グループです。他のハチの技術を学び取るなど昆虫の中でも高い知能を有することで知られるミツバチの「数学的な能力」について調べています。
実験では、まず、白いカードに四角形や三角形のマークを描いてミツバチに「数」を理解させました。マークの数は「数字」を表しており、複数のカードの中でマークの数が最も少ないもの、すなわち数字の最も小さなカードの下に、ミツバチの大好物の砂糖水という報酬を置くことで、ミツバチを訓練しました。
訓練ののち、ミツバチは数の大小を理解して、カードに描かれたマークの最も小さな場所に集まるようになったとのこと。「3と4」「2と1」のような例でも正しく数の小さい場所で報酬を得られることから、数字を理解していることが確認されました。
ここで研究者たちは、マークを1つも描いていない「ゼロ」を表すカードを提示してみると、ゼロのカードを使った訓練を受けていなかったにもかかわらず、ミツバチは真っ白なカードに60%から70%長く滞在していることが確認され、ゼロの概念を理解していると判明しました。このゼロのカードを含めたテストでは、「6と0」のように差が大きくなるほど正確にゼロを選択することもわかっています。
昆虫の中でも抜群の知能を持つことで知られていたミツバチが、「ゼロの概念」をも理解できるという発見は、科学者たちに衝撃を持って受け止められています。人間の脳には800億個の神経細胞があるのに対して、ミツバチにある神経細胞は100万個未満だとのこと。少ないニューロンにもかかわらず高度な知能を備えたミツバチの脳を研究することで、より少ないニューロンで高度な計算を行えるメカニズムを解明できれば、ニューラルネットワーク技術を活用するAI技術にも転用できるのではないかと期待されています。
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