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アルツハイマー治療薬の承認を出した規制当局の諮問委員が3名辞任、承認に対する抗議のため


国内の医薬品規制などを管轄するアメリカ食品医薬品局(FDA)が日本のエーザイとアメリカの老舗医薬品メーカー・Biogenが共同開発したアルツハイマー治療薬「ADUHELM」を承認した一件を巡って、FDAの諮問委員3名が辞任しました。辞任した諮問委員のうち1名は「近代のアメリカ史の中でおそらく最悪の医薬品承認」と述べています。

Three experts resign as FDA advisers over approval of Alzheimer’s drug | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/06/three-experts-resign-as-fda-advisors-over-approval-of-alzheimers-drug/

Biogen says FDA didn't push for trial before Alzheimer's approval - Axios
https://www.axios.com/biogen-interview-fda-alzheimers-aduhelm-approval-8666ee56-6294-4365-9e68-43ba84045c8b.html

2021年6月8日、FDAがエーザイとBiogenが共同開発したアルツハイマー治療薬「アデュカヌマブ(商品名:ADUHELM)」を承認しました。ADUHELMはアルツハイマー病患者の脳内に多く存在することが知られるアミロイドβプラークを減少させることでアルツハイマー病に作用する医薬品で、エーザイの内藤晴夫CEOは「アルツハイマー病治療の歴史に新たな1ページを開くことができたことを大変嬉しく思います」と述べていました。


しかし、このADUHELMの承認に専門家から批判が相次いでいます。報道によると、2019年上半期に行われた第III相試験では「効果なし」という結果が得られていた上、当のFDA自身も独立査問委員会を構成するメンバー11人のうち10人までが「Biogenの提出したデータをアデュカヌマブに有効性があるとする一次証拠とみなすかどうか」という設問に「No」と投票していたとのこと。こうした経緯があったにも関わらず、FDAは突如として意見を翻して今回の承認を出しました。

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この承認の後、大手医療機関メイヨークリニックのデビッド・ノップマン氏とワシントン大学のジョエル・パールマッター氏が諮問委員会からの辞任を表明。そして続く2021年6月10日、ハーバード大学医学部のアーロン・ケッセルハイム教授が辞表を提出。ケッセルハイム教授はFDA長官代行に宛てた書簡の中で、「諮問委員会と査読者は『本剤が有効であるという説得力のある証拠がない』と報告したが、FDAの指導者はこの報告を却下し、諮問委員会の議論に含まれていない考慮事項に基づいて本剤を承認した」「近代のアメリカ史の中でおそらく最悪の医薬品承認」と今回の決定について非難し、「FDAは今回の承認を正当化する詳細な根拠を国民に示す義務がある」と語りました。


今回の承認は「迅速承認」で、今後の臨床試験による検証を必須とされていますが、FDAが承認を取り消すまでADUHELMの販売は可能です。

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in Posted by darkhorse_log

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