サイエンス

規制当局の承認を受けた「アルツハイマー治療薬」に研究者から非難の声、「脳腫脹のリスクが非常に高い」


国内の医薬品規制などを管轄するアメリカ食品医薬品局(FDA)が新たに承認したエーザイのアルツハイマー病治療薬「ADUHELM」について、研究者などが「脳腫脹のリスクが40%もある」「有効性が確認されていない」と非難の声を上げたと報じられました。

A “disgraceful decision:” Researchers blast FDA for approving Alzheimer’s drug | Ars Technica
https://arstechnica.com/science/2021/06/a-disgraceful-decision-researchers-blast-fda-for-approving-alzheimers-drug/

2021年6月8日、日本の医薬品大手・エーザイとアメリカ最古参の医薬品メーカー・Biogenが共同開発した「アデュカヌマブ(商品名:ADUHELM)」がFDAの承認を受けました。ADUHELMはアルツハイマー病患者の脳内に多く存在することが知られるアミロイドβプラークを減少させることでアルツハイマー病に作用する医薬品。エーザイの内藤晴夫CEOは「アルツハイマー病治療の歴史に新たな1ページを開くことができたことを大変嬉しく思います」とコメントしていました。

日本企業が開発したアルツハイマー病の治療薬がFDAに承認される - GIGAZINE


しかし、このADUHELMの承認に対して研究者などから非難の声があがっています。こうした非難の声は、「問題のある治験データ」「疑問の残る統計的評価」の2点に集中しています。

「問題のある治験データ」は、2019年に行われた2つの無作為型二重盲検プラセボ対照第III相試験についてのもので、上半期に行われた試験が「効果なし」という結論でBiogenによって早々に試験を打ち切られたという経緯が疑問視されています。ニュースサイトのArs Technicaによると、Biogenは1度目の試験が失敗に終わった後、同年下半期にわずかながら利点が見られたとして再試験を実施。1度目の試験よりも用量を増やしたところ、「78週にわたってアミロイドβプラークがわずかに減少した」「認知機能テストでわずかな改善が見られた」という結果が得られたものの、同時に「被験者の約40%で脳腫脹が確認された」という結果も示されました。

なお、エーザイはこの点については、「ADUHELMは、次のような重篤な副作用を引き起こす可能性があります。アミロイド関連画像異常(ARIA)は、通常は症状を引き起こさない一般的な副作用ですが、重篤になる場合があります」と表記してます。


「疑問の残る統計的評価」については、2020年11月にFDAの査読者が「Biogenの分析結果は無根拠であり、治療効果や症状悪化を減速させる効果に関する説得力のある実質的な証拠はない」「確たる結論を述べるためには別の研究が待たれる」という統計的評価を発表しただけでなく、FDAの独立査問委員会を構成するメンバー11人のうち10人までが「Biogenの提出したデータをアデュカヌマブに有効性があるとする一次証拠とみなすかどうか」という設問に「No」と投票した点が問題とされました。なお、残る1人のメンバーは「不確かである」という結論を見送る選択肢に投票したとのこと。

以上のようにFDAは2020年11月時点でADUHELMに対し否定的な結論を出していましたが、突如として意見を翻して今回の承認を出しました。こうした経緯について、レディング大学の神経科学者であるマーク・ダラス氏は「認知症患者に具体的な利益をもたらすという明確なビジョンは存在しません。これは危険な前例です」と、ユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンのロバート・ハワード氏は「意義のある認知症治療研究を狂わせかねない」と、王立科学協会でコラムニストも務める医薬品業界の専門家のデレク・ロウ氏は「恥ずべきこと」とそれぞれコメントしています。

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in サイエンス, Posted by log1k_iy

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