老化と共に減少するタンパク質を増加させてマウスの寿命を23%延ばすことに研究者が成功
多くの人々ができるだけ長生きしたいと考えており、世界中の研究者が寿命を延ばす方法について調査しています。新たに、イスラエルのバル=イラン大学やアメリカ国立衛生研究所などの国際的な研究チームが発表した論文で、加齢と共に減少する1種類のタンパク質の生産量を増加させることにより、マウスの寿命を23%も延ばすことに成功したと報告されました。
Restoration of energy homeostasis by SIRT6 extends healthy lifespan | Nature Communications
https://doi.org/10.1038/s41467-021-23545-7
Israeli scientists extend mice's lives by 23%, say method may work on humans | The Times of Israel
https://www.timesofisrael.com/israeli-scientists-extend-mices-lives-by-23-say-method-may-work-on-humans/
バル=イラン大学で寿命についての研究を行うハイム・コーヘン准教授が率いる研究チームは、マウスの遺伝子を組み換えて加齢と共に減少するタンパク質を通常より多く生産するように操作し、通常のマウスと比較して寿命がどう変わるのかを調べる実験を行いました。
今回の実験の調査対象は、老化するにつれて減少することが知られているSIRT1、そしてSIRT6という2種類のタンパク質。研究チームは「通常のマウス」「SIRT1が過剰に発現するマウス」「SIRT6が過剰に発現するマウス」「SIRT1とSIRT6が過剰に発現するマウス」を作り、それぞれの平均寿命を調べたとのこと。
実験の結果、通常のマウスにおける平均寿命はオスが732日でメスが756日でしたが、SIRT6を過剰発現させたオスは932日でメスは872日だったことが判明。SIRT6の生産量が増えたオスは約27%、メスは約15%も平均寿命が延びたことがわかりました。オスとメスを合わせると、平均寿命は23%延びたとのこと。なお、SIRT1とSIRT6をいずれも増加させたマウスでは同様に寿命が延びましたが、SIRT1のみを増加させたマウスでは寿命はほとんど延びませんでした。
今回の実験では、老化したマウスは脂肪や乳酸からエネルギーを得る能力が低下していたものの、高レベルのSIRT6を持つマウスはこれらの栄養からエネルギーを得る能力が維持されていたことも判明しました。また、SIRT6の生産量が多いマウスではコレステロール値が低く、がんになりにくく、より速く走ることができたそうです。
コーエン氏は、「今回の発見はSIRT6が健康な老化の速度を制御することを示しており、SIRT6の活性を高めることが老化を遅らせる可能性があることを示しています」とコメント。記事作成時点では人間の体でSIRT6を増加させる方法はないそうですが、今後2~3年間で「SIRT6を増加させる薬」を開発できる可能性があり、将来的には老化防止に薬が使われるかもしれないとのこと。「人間の平均寿命がマウスと同じように延びると、平均して120歳近くまで生きられるため、平均寿命の変化は重要です」とコーエン氏は述べました。
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