健康寿命を延ばせる物質「フィセチン」が野菜や果物に含まれている
by Jez Timms
「老化細胞」と呼ばれるダメージを負った細胞を減らし、寿命を延ばして、健康状態を改善することが可能な治療の存在を2018年7月に発表した研究者たちが、新たに「フィセチン」と呼ばれる自然由来の物質によって年老いたマウスの寿命や健康状態を大きく改善することに成功しました。
Fisetin is a senotherapeutic that extends health and lifespan - EBioMedicine
https://www.ebiomedicine.com/article/S2352-3964(18)30373-6/fulltext
Researchers have discovered how to slow aging: Natural product found to reduce the level of damaged cells in the body, caused by aging -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/10/181002114024.htm
人が年をとるにつれ細胞が受けたダメージは蓄積していきますが、このダメージがあるレベルに達したり必要な構成要素が欠乏することにより、細胞の分裂や成長は停止します。このプロセスを細胞老化と呼びます。細胞老化が起こると免疫系に「ダメージを受けた細胞を取り除いてくれ」というメッセージを送るべく、細胞は炎症性因子という物質を放出します。若い人であれば免疫系により老化細胞は取り除かれますが、高齢になるとうまく老化細胞を取り除くことができず、蓄積した老化細胞が慢性的な炎症を引き起こし、組織を分解する酵素が放出されるようになります。
ミネソタ・メディカル・スクール大学のPaul D. Robbins氏、Laura J. Niedernhofer氏、そしてメイヨークリニックのJames L. Kirkland氏とTamara Tchkonia氏は、野菜や果物に多く含まれる「フィセチン」という物質が体内に蓄積された老化細胞のレベルを減少させることを発見しました。研究者が高齢のマウスにフィセチンを投与したところ、健康状態が改善され、寿命も延びたそうです。
「この結果は、我々が『健康寿命』と呼ばれるものの期間を、たとえ人生の終わりの時期からであっても延ばせるということを示しています。しかし、適切な物質の投与量など、解決すべき疑問はまだ多く残されています」とRobbins氏は語りました。
by Vlad Sargu
これまで、特定の薬や物質が異なる組織、異なる細胞に対してどのように機能するのかを特定する方法は限られていました。1つの治療法によって本当に老化細胞だけが攻撃されているのかの確認は難しく、ゆえにフィセチンの効果はこれまで発表されてきませんでした。しかし、ミネソタ大学の技術者の協力を得て「CyTOFマスサイトメトリー測定受託」という特殊な技術をエイジング研究に初めて持ち込むことで、フィセチンの効果が確認されたとのことです。
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