老化を食い止め若返らせて寿命を延長する効果が期待される薬や物質
By Charline Tetiyevsky
Googleが老化現象や老齢疾患に立ち向かう研究施設「Calico」を設立したり、遺伝子レベルでの長寿と健康を実現するための大規模な研究が開始されたりなど、世界中で老化を遅らせる研究が進められており、その中でも研究者たちが期待を抱いているのがラパマイシン・メトホルミン・レスベラトロールという3つの薬および物質です。
The search for the ‘Holy Grail’ of human longevity | Toronto Star
https://www.thestar.com/news/insight/2016/08/07/the-search-for-the-holy-grail-of-human-longevity.html
◆ラパマイシン
1965年にイースター島の土壌から発見されたラパマイシンは免疫抑制剤の1つ。2009年にはマウスを使った実験が行われ、ラパマイシンを与えられたマウスは、ラパマイシンを投与されていないマウスと比べて寿命が10~30%ほど伸びることが確認されました。しかし、白内障や睾丸萎缩症といった強い副作用がマウスの実験で確認されており、老化を防ぎ寿命を延ばす薬としてはまだまだ研究が必要と考えられています。
◆メトホルミン
メトホルミンは2型糖尿病を発症した患者の血糖値レベルをコントロールする経口糖尿病治療薬の1つ。イギリス人腫瘍学者のマイケル・パロック博士は2007年にガン細胞の成長を遅らせる効果がメトホルミンにあることを研究で発表しました。ポラック博士によれば、メトホルミンは使用において安全性が高く、老化を遅らせるとされる薬の中では臨床試験の実施に最も近い位置にいるとのこと。
By sylvar
メトホルミンの臨床試験はアメリカで一度見送られていますが、もし実施され臨床試験がうまくいけば、「加齢に伴う病気の治療薬」として販売される可能性があるとのこと。なぜ「加齢に伴う病気の治療薬」ではなく「老化を防ぐ薬」として販売されないかというと、医薬品の許可や取締りを行うアメリカ食品医薬品局が老化を病気としては認めていないためで、「老化予防薬」というラベルを貼ることはできないようです。ポラック博士はメトホルミンが安全であるとしながらも、「副作用の発生確率がゼロではないため、医薬品としての実用化には多くの時間が必要である」と述べています。
◆レスベラトロール
レスベラトロールは赤ワインやブドウの皮、ダークチョコレートなどに含まれる抗酸化物質。ハエや魚類だけでなく、マウスを使った実験でも寿命を延長する作用があることが確認されていますが、人間でも同じ作用があるかどうかは認められていません。
By Andreanna Moya Photography
バック老化現象研究所のジュディス・カンピシ博士は「レスベラトロールに寿命延長作用が認められたとき、このニュースは多くのメディアをにぎわせました。しかし、薬用量のレスベラトロールをワインから摂取するには、肝臓を破壊するくらいのワインを飲まなければいけません。レスベラトロールに関する誇張された情報が多数出回っていますが、実際のところはまだまだ多くの実験や研究が必要という段階です」と話しました。
老化を遅らせたり寿命を延長する作用が認められている薬や物質は存在するものの、実際に実用化できるレベルに達するまでは、まだまだ多くの時間がかかりそうです。
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