メモ

「老化を遅らせる」という究極の長寿実現のための世界最大の遺伝子研究

By George Bush Presidential Library and Museum

医学が発達したおかげで人々の健康状況は非常に向上し、107歳のおじいちゃんがバースデーパーティーをマクドナルドで開催するというケースもみられます。それでもなお長寿への望みは尽きることがなく、遺伝子レベルでの長寿と健康を実現するための大規模な研究が開始されようとしています。

Human Longevity, Inc.
http://www.humanlongevity.com/

A Genetic Entrepreneur Sets His Sights on Aging and Death - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/03/05/business/in-pursuit-of-longevity-a-plan-to-harness-dna-sequencing.html?_r=2

Geneticist's startup hopes to defeat human aging with world's largest genome library | The Verge
http://www.theverge.com/2014/3/4/5470074/j-craig-venter-founds-new-anti-aging-genome-sequencing-project

アメリカの分子生物学者かつ実業家のジョン・クレイグ・ベンター博士らは2014年3月、人々の老化を緩やかにすることで寿命そのものを長くすることを目的とした企業「ヒューマン・ロンジェビティ」社を設立しました。同社のウェブサイトには「老化こそが人類の病における最大のリスクです。私たちの目標は、より健康で活力に満ちた人生の時間を延ばし、年齢を重ねるという行為を一変させることです」というスローガンが掲げられ、より健康に、より長く生きるための研究が行われるのですが、同社が用いる手法はこれまでにないものとなっています。


その手法とは、ベンター博士の言によると「世界最大のDNAシークエンス作戦(the largest human DNA sequencing operation in the world)」というもので、年間4万人ものヒトゲノムの解析を行い、保管するというもの。健康な人とそうでない人の膨大なDNA情報を比較することで、老化を引き起こす原因物質を特定し、そこから引き起こされるガンや心臓疾患のリスクを軽減させることを最終的な目標に掲げています。

ベンター博士が設立したヒューマン・ロンジェビティ社には、世界中の富裕層を中心に7000万ドル(約71億円)の資金が寄せられたといいます。博士が明かしたところによると、最も多い資金を提供したのはマレーシアのリゾート・カジノコングロマリットを運営するゲンティン・グループのオーナーで「マレーシアのカジノ王」とも呼ばれる林梧桐氏とのこと。その計画では、健康な人や病気を患っている人、また生まれたての幼児から100歳を超える長寿の人にいたるまで幅広いサンプルを解析することになっており、同時に体内のさまざまな微生物についての調査も行われるとされています。

By Nik Page

博士の試みについて評価する声も挙がっており、ボストン大学で長寿と遺伝子を研究するトーマス・パールズ博士は「ベンター博士の研究は、この分野に向けられる予算の流れを増やすもので、研究のスピードを上げるものだ」と語っています。パールズ博士によると、80歳代までの健康状態はそれまでの生活習慣によるものですが、100歳を超えるような長寿には遺伝子の働きが密接にかかわっているという調査結果が明らかにされています。

ヒューマン・ロンジェビティ社は、解析から得られた結果を製薬企業に販売し、将来的には新薬などの成果から利益を得るという計画を立てています。しかし、この計画が間違いなく成功するかどうかはまだ未知数であることも事実です。同様の流れは他企業や、学術の世界からも起こってきており、必ずしも同社の専売特許というものではないためです。

By Images Money

ベンター博士は「年間10万サンプルの解析を目指す」としていますが、1回の解析にかかるコストを1000ドル(約10万円)とみても、年間に必要な予算は1億ドル(約102億円)にも及び、同社が集めた約70億円の資金ですら多く超えるものとなってしまいます。さらに、いくつかの研究機関からは、解析結果を無償で提供するという動きもあることから、必ずしも順風満帆とは言えない側面があるのも事実となっています。

病気そのものを封じ込めようとする対症療法の逆を行き、老化そのものの進行を遅らせて健康なままで長寿を実現するという試みが、ビジネスの観点を含めて成功するのか関心が集まるところです。この分野では、Googleが老化現象や老齢疾患に立ち向かう新会社として「Calico」社を設立しており、ラリー・ペイジCEOが深く関わっているほか、Appleの会長を務めるアーサー・D・レビンソン氏がCEOに就任しています。

By Ben Marvin

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in メモ,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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