サイエンス

Wi-Fiの電波で発電する技術を東北大学などが開発


Wi-Fiで用いられている2.4GHz帯の電磁波を「スピントロニクス」の原理で効率的に送受信する技術を、東北大学電気通信研究所の深見俊輔教授と大野秀男教授、シンガポール国立大学のHyunsoo Yang教授らのグループが開発しました。さらに、この技術を発展させ、電磁波を直流電圧信号に変換し、LEDを発光させることにも成功したとのこと。

Electrically connected spin-torque oscillators array for 2.4 GHz WiFi band transmission and energy harvesting | Nature Communications
https://doi.org/10.1038/s41467-021-23181-1


Wi-Fiの電波で発電するスピントロニクス技術を開発
(PDFファイル)http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv_press20210514_03web_wifi .pdf

「スピントロニクス」とは、これまで電子工学と磁気工学に分かれて利用されてきた電子の電気的性質(電荷)と磁気的性質(スピン)を同時に利用することで発現する新たな現象を明らかにし、工学的に利用しようとする学問の分野です。


研究チームが開発した技術は、スピントロニクスの原理を利用する機能性素子の代表例である「磁気トンネル接合」というスピントロニクス素子を用いて、Wi-Fiの電波で発電できる技術。「磁気トンネル接合」の素子は、すでに磁界センサーや不揮発性メモリーでは実用化されているもので、電磁波の送受信への応用も研究が進んでいますが、Wi-Fiの周波数帯で高強度の信号を生み出す性能には至っていませんでした。

今回、研究チームは素子の構造の一部である「自由層」の膜厚・形状を精密に制御することで、微弱な入力でも大きな出力を得ることに成功し、2.4GHz帯の電波からの発電に成功しました。


Wi-Fiはいまや世の中のあちこちで利用することができますが、これはつまり、「2.4GHz帯の電波があちこちを飛び交っている」とも言い換えることができ、何らかの形でエネルギーを利用することができないか、研究が行われてきました。

研究チームの実証実験では、コンデンサーが3~4秒で充電され、LEDを1分間にわたり光らせることができました。これは、これまで電池交換が必要とされてきた部分を、Wi-Fiによる充電で補う可能性を示したもので、発表資料で東北大学は「今後包括的な研究開発を行うことでエレクトロニクスの新しいパラダイムが切り拓かれていくことが期待されます」と記しています。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
5Gネットワークを「ワイヤレス電力網」化するためのアンテナが開発される - GIGAZINE

受信したWi-Fiを電力に変換するため新素材を使った「レクテナ」をMITが開発 - GIGAZINE

受けた電波で発電するのでバッテリー不要&ワイヤレスでプログラムの書き換えが可能なコンピューター「WISP」 - GIGAZINE

Wi-Fiの消費電力を1万分の1まで減らす新技術「Passive Wi-Fi」でバッテリー長持ち・モノのインターネットが近づくかも - GIGAZINE

in ハードウェア,   サイエンス, Posted by logc_nt

You can read the machine translated English article here.