サイエンス

新型コロナワクチンは2回目の接種を遅らせて1回目の接種を優先した方が多くの命を救えるとの研究結果


ファイザーやモデルナ製の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンは、1回目の接種後から3~4週間の間隔を空けて2回目の接種をすることが推奨されています。ところが、医学誌のBritish Medical Journal(BMJ)に掲載された新たな論文では、「2回目のワクチン接種を遅らせて1回目のワクチン接種を大勢に行った方が多くの人命を救うことができる」との研究結果が示されました。

Public health impact of delaying second dose of BNT162b2 or mRNA-1273 covid-19 vaccine: simulation agent based modeling study | The BMJ
https://www.bmj.com/content/373/bmj.n1087

Delaying second Covid vaccine doses can save lives, study finds | Coronavirus | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2021/may/12/delaying-second-covid-vaccine-doses-can-save-lives-study-finds

世界中で広く接種されているファイザーやモデルナ製のCOVID-19ワクチンは、一定の間隔を空けて2回接種することが原則です。しかし、ワクチンの普及がなかなか進まず、全ての国民に2回ずつワクチンを接種するにはかなりの時間がかかることから、「ワクチンの投与量を半分にして1人1回ずつワクチンを接種させるべきではないか」との意見も出ています。


2回目のワクチン接種を遅らせるという計画にワクチンの開発企業は反対を表明しており、ファイザーは2021年1月4日に「異なる接種時期に関するワクチンの安全性や有効性は検証されていない」との声明を発表。また、1回のみの接種では変異株に対する免疫が十分に獲得できないとの調査結果もあります。

しかし、イギリスでは2回目の接種を原則の「3~4週間後」から「最大で12週間後」まで遅らせることを承認し、1回目の接種を大勢に施すことを優先する政策が採られています。「少なくとも1回接種した人」を増やすことを最優先にした結果、2021年4月12日には「国内のすべての50歳以上および高リスクと判断された人」に対する1回目のワクチン接種が完了しました。

イギリスのすべての50歳以上に1回目のワクチン提供 - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/56728252


1回のワクチン接種がどれほど感染抑制に役立つのかについてはさまざまな意見があったものの、2021年3月にはアメリカ疾病対策センター(CDC)により、ファイザーとモデルナ製のワクチンは1回目の接種後に感染リスクが80%減少すると判明。また、イギリスの当局は「ファイザーやアストラゼネカ製のワクチンを1回接種した後、全ての年齢層で感染が65%減少した」との調査結果を発表しています。

コロナワクチン、1回接種でも全年齢層で感染が65%減少=英調査 | ロイター
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-vaccines-britain-idJPKBN2CA00M


こうした状況を受けて、1月に「ワクチンを2回接種させる計画は変えない」と政府が発表したアメリカでも、「最低1回のワクチン接種」を優先するべきではないかと考える専門家が増えています。そんな中、アメリカ・ミネソタ州に本部を置くメイヨー・クリニックの研究者が中心となり、ワクチン投与スケジュールを変更して2回目の投与を遅らせた際の効果をシミュレーションした研究結果が発表されました。

研究チームは、アメリカで広く接種されているファイザーとモデルナ製のワクチンについて、2回の接種を原則通りの間隔で行う標準的な接種スケジュールと、2回目の接種を遅らせて1回のみの接種を優先するスケジュールをモデル化。1回のみのワクチン接種がどれほどの有効性をもたらすのかを考慮し、どれほどの人命が救われるのかをシミュレーションしたとのこと。

シミュレーションの結果、研究チームは2回接種を徹底するよりも1回接種を広く実施することを優先した方が、より多くの人命が救われることを発見しました。研究チームによると、1回目のワクチン接種による有効性が80%であり、1日当たりにワクチン接種を受ける割合が全人口の0.1~0.3%の場合、1回目の接種を優先することで65歳未満の人々における死亡者数が10万人当たり26~47人減ることが判明したそうです。

公衆衛生の専門家であるピーター・イングリッシュ博士は今回の研究について、「2回目のワクチン接種を遅らせることが、COVID-19を最も迅速に押さえ込み、新たな変異株が世界に影響を及ぼすのを防ぐ方法だと示した」と主張。「私たちは皆、全世界ができるだけ速くワクチン接種を受けられるように保証することでメリットが得られます」と述べ、ワクチンに余裕のある国がワクチンが足りていない国に分配するといったサポートが、世界全体の利益になると訴えました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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