死亡事故を起こしたテスラ車はオートパイロット機能が使えなかったとの調査結果、「運転席が無人だった」という情報も誤りか
2021年4月17日、2019年型のテスラ・モデルSが木と衝突した後に炎上し、2人が死亡するという事故が発生しました。この事故の調査を進めているアメリカの国家運輸安全委員会(NTSB)が発表した予備レポートでは、モデルSがオートパイロット機能を有効化できる状態ではなかった可能性が高いと示されたほか、事故直後の「運転席は無人だった」という報告と矛盾する情報も記されています。
HWY21FH007-preliminary-report.pdf
(PDFファイル)https://www.ntsb.gov/investigations/AccidentReports/Reports/HWY21FH007-preliminary-report.pdf
NTSB releases preliminary report on fatal Tesla crash in Spring, Texas
https://www.cnbc.com/2021/05/10/ntsb-releases-preliminary-report-on-fatal-tesla-crash-in-spring-texas.html
NTSB: Tesla Model S in Crash Couldn't Have Been Using Autopilot
https://www.caranddriver.com/news/a36387950/ntsb-investigation-tesla-model-s-autopilot/
2021年4月17日にアメリカ・テキサス州で発生したテスラ・モデルSの衝突事故では、車の持ち主である59歳の男性と同乗していた69歳の男性の2人が死亡しました。この事故では車が激しく炎上したことがわかっているだけでなく、地元警察のマーク・ハーマン氏は「遺体の位置からみて、運転席には誰もいない状態だったと確信しています」と述べました。事故当時のモデルSがオートパイロット機能を有効にしていたかどうかは不明でしたが、運転席が無人だったとする報告は走行時にオートパイロットが有効だったことを示唆するものです。
テスラ・モデルSが衝突事故で大炎上し2名が死亡、運転席は無人 - GIGAZINE
ところが、テスラの自動車工学担当ヴァイス・プレジデントであるラース・モラビー氏は、事故車のハンドルを調べた結果から運転席には誰かが座っていたと結論付けられるとして、警察の調査結果を否定しました。また、テスラのイーロン・マスクCEOもこの事故に言及し、「回収されたデータログによると、問題の車はオートパイロットが有効化されておらず、オートパイロットをオンにするために必要な車線も存在しない道でした」と主張していました。
運転席が無人だったとするテスラ・モデルSの死亡事故に関し、テスラが「運転席には人がいた」と主張 - GIGAZINE
そして現地時間の5月10日、事故の調査を進めてきたNTSBと米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は調査結果の予備報告書を発表しました。この報告書によると、事故現場はモデルSの持ち主である59歳男性の自宅から550フィート(約170m)ほど離れた場所。当該車両はカーブで逸走して縁石を乗り越え、排水路やマンホールも越えて、木に衝突したとのこと。また、事故現場は車線を示す線が引かれていない片側1車線の道路であり、制限速度は時速30マイル(約48km)だったことなども記されています。
衝突後の火災は高電圧のリチウムイオン電池ケースが破損したことが原因であり、車載ストレージなどが車両と共に焼失したそうですが、車の速度・シートベルトの状態・加速度・エアバッグの展開といったデータを保存する車載拘束制御モジュールは無事だったとのこと。このモジュールはNTSBの研究所に引き渡され、事故当時の状況についての調査が行われました。
報告書によると、59歳男性の自宅に設置されていた監視カメラの映像には59歳の男性がモデルSの運転席に座り、69歳の男性が助手席に座る姿が記録されていました。この点は、事故直後に警察が主張した「運転席は無人だった」とする見解を否定するものです。
また、確かにモデルSにはオートパイロット機能が搭載されていたものの、事故現場では機能を使うことはできなかったことも指摘されています。テスラのオートパイロット機能を有効化するには、先行車との距離を感知して車両の走行スピードを制御する「Traffic Aware Cruise Control(交通量感知型クルーズコントロール)」と、車線を感知して適切な経路で操縦する「Autosteer(自動操縦)」の2種類が動作する必要があります。
ところが、NTSBが事故現場でテスラ車を使ってテストした結果、クルーズコントロールは動作したものの、現場の道路には認識できる車線がなかったことから自動操縦は動作しませんでした。つまり、事故現場ではオートパイロット機能が有効化できなかったということになります。
by Automobile Italia
今後もNTSBとNHTSAの調査はテスラと協力して継続され、シートベルトの使用や衝突の状況、乗員の退避といった問題について調べるとのことです。
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