「るろうに剣心 最終章 The Final」の大友啓史監督にインタビュー、シリーズ完結2部作にどう挑んだのか
累計観客動員数が980万人以上という人気映画「るろうに剣心」シリーズが、いよいよ「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」の2作連続公開をもって完結します。約10年にわたるシリーズを手がける大友啓史監督に、まず本日・2021年4月23日(金)公開の「るろうに剣心 最終章 The Final」についての話をうかがってきました。
映画『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』公式サイト
https://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin2020/
GIGAZINE(以下、G):
2014年に連続公開されたシリーズ2作目「京都大火編」と3作目「伝説の最期編」のときに、あまり準備期間が取れなくて大変だったという話を目にしました。今回の「最終章」では、準備期間はどうでしたか?
大友啓史監督(以下、大友):
なかなかシビれる質問からですね(笑)。話自体は2017年ぐらいに、ゆるゆるとプロデューサーの方からもらいました。2014年の撮影がハードだったので、なかなか腰が上がらなかったというのはあるのですが、3年が経過して「そろそろやりませんか?」と。
G:
なるほど。
大友:
「京都大火編/伝説の最期編」のあと、自分の企画もいろいろと進んでいたという事情もあります。それで、まずはスタッフに先乗りしてもらって進めてもらう形になりました。僕が取りかかったのは、2018年の春ぐらいかな。本当はもう少し前から入らないといけなかったかもしれません。脚本がなかなか難しかったんですよ。
G:
そうだったんですか。
大友:
最終章は「The Final」と「The Beginning」という2部作ですが、僕としては「るろうに剣心」というシリーズをやる以上は、剣心と巴の大事なお話である「The Beginning」はやりたいと思っていたんです。剣心の過去の物語で、2人のラブストーリーでもある。
G:
はい。
大友:
そのためには「The Final」では、巴をしっかり描かなければいけないなと思いました。一方で、この「The Final」、原作だと「人誅編」と呼ばれる部分で、薫に似せた人形が出てきますよね。
G:
人の皮を張ったという……。
大友:
それで薫を死んだと思い込ませて、剣心を絶望に突き落とすという。それが、漫画であれば問題なく表現できると思うんですが、実写映像にするとなると、とても難しいわけです。
G:
ああー……。
大友:
いろいろ考えたときに、雪代縁と緋村剣心という2人が、巴という女性を巡って戦うことになる、その感情はすごく強いものなんじゃないかなというように思ったんです。剣心にとって、巴は運命の人であり、唯一愛した女性である。その女性を自分の手で斬ってしまったという過去を抱えていて、あの頬の十字傷にもつながっています。一方で、縁にとっても、巴は大事な姉であり、その姉を剣心が殺してしまったと。
G:
はい。
大友:
そういった部分を軸に、超絶アクションの連続を、と。「できるだけアクションで勝負しよう」という考えを持ちつつ、脚本を作っていったという感じです。
G:
本作では、前川道場での戦いで神棚が壊されたり、縁が「活心真如」の額を落としたりと、象徴的なものが破壊されている印象があります。
大友:
好きなんですよ、アクション班が(笑)。それこそ、八角屋根の“あずまや”まで倒しちゃいましたからね。作ったものを壊すというのは、必ずしも気持ちがいいものではないかもしれないけれど、それをチーム全体としても納得できるような見せ方にしています。あずまやに関しては、あれこそ縁のパワーの表れですよね。恨みとか、感情とか、ひたすらに剣心が引き受けていく。
大友:
巴への思いについては、ぜひ「The Beginning」も見ていただいて感じてもらいたいですが、だからこそ、剣心も縁に言葉をかけるわけです。
G:
なるほど。
大友:
あのシーンについては、現場で演じてみたら、佐藤健から「縁の剣は避けられない」と言われたシーンでもあります。それで、あのような見せ方になっています。
G:
そうだったんですか。そういった形で、現場で調整することもあるんですか?
大友:
当然現場で変わることもあるし、その前に「ここはこうしよう」と明確に決めていることもあります。みんなで「るろうに剣心」には何が大事なのかということを考え、積み重ねていく感じです。
G:
本作では12都道府県・43カ所ものロケが行われたとのことですが、このロケ地はどのように選ばれたのですか?
大友:
「このイメージだと、こういう場所はどうですか?」という候補の写真を見せてもらって、良さそうなところをピックアップしてもらって、実際に足を運びます。その上で、当然撮影の許可も必要ですからね。このシリーズのロケーションは本物志向なので、もちろん観光地みたいなところもありますけれど、多くは今でも生活に溶け込んでいるような古寺だとか、そういう場所を探しています。あと、「The Beginning」だと幕末ですけど、「The Final」は明治に入って和洋折衷な感じがあるので、その雰囲気がある場所というのはちょっと限られてくるんです。いい感じの洋館があるかな、とかね。
G:
なるほど。
大友:
あとは「これまでのシリーズの雰囲気をいかに引き継いでいくか」ということです。見たときに「帰ってきた」と思ってもらえるものにしたい。剣心、薫、左之助、恵、弥彦と、「ああ、いつもの5人だ」と。だから、やっぱり「おろ?」の剣心から入りたいなと思っていました。
G:
その感じは見事に出ていましたね。雰囲気は引き継ぎつつ、ということですが、制作していて、なにか前3作との違いはありましたか?
大友:
どうだろう……特にないと思います。ただ、みんな前作のときよりそれぞれに成長しているというのはありますね。その点で言うなら、「るろうに剣心」は1作目のときに「剣心の動きがすごい!」と佐藤健のすごさを皆さんに発見してもらったというところがあるので、今回は新田真剣佑のすごいところも発見してもらおう、と考えていました。
大友:
縁は初登場時、列車内での斎藤一と戦いますが、あの列車もちゃんと作っています。車両内でバトルをするにあたって、当時の車両を実尺で再現しようという考えもあったんですが、それではちょっと狭いので、少し大きめに作っていますね。
G:
実物そのものかと思っていたら……。
大友:
アクションって、そういう空間的な制約がかかっていたりすると、逆に意外と良いアイディアが出てくることもあるんですね。
G:
そうなんですね。
大友:
剣心と縁の戦いは、原作だと砂浜です。しかし、アクションという点から考えると、砂浜というのは足場として非常に厳しいものがあります。それで、きっちり全力を出せるようにコンディションのいい場所でやるようにしようということで変更を加えています。アクションは一番いいところを見せないといけませんから。
G:
なるほど。
大友:
やっぱり、天気の影響を受けないよう場所がいいですね。空間設計のアプローチで言うと、美術のスタッフをはじめ、それぞれが工夫できることをどんどん演出してくれます。このあたりは、これまでの3作品を通じて今までの積み重ねが効いてますね。チーム「るろ剣」は、指示待ちではない、自主的にどんどん動けるチームですからね。前作の「京都大火編/伝説の最期編」の場合、前編と後編は同じ時代で、登場人物もほとんど同じでしたが、今回の「最終章」2部作は明治時代のロケと幕末のロケが必要でした。2部作だけれどまったく別の2作品みたいなものだったので、単に長さが2倍というだけではなかったですね。片や、明治時代の街灯に照らされた和洋折衷の東京。片や、幕末・江戸時代の京都ですから。
G:
「京都大火編/伝説の最期編」公開時に、大友監督は「映画はとんでもないアクション・エンタメであると同時に、壮絶な人間ドラマ。とにかく観た人の魂がざらつくようなものに仕上げたい」という話をしていました。これは、映画を見て感情を刺激されるようなイメージですか?それとも、もっと異なるイメージでしょうか。
大友:
そうですね……実際、試写でご覧になったと思いますが、何かが残ったりしませんでしたか?
G:
いろいろ感情を揺さぶられ、ざらつかされた部分はあると思います。
大友:
そうやって何か、見た人のもとに残ればいいなという感じですね。
G:
今回、剣心と縁の戦いなどを見ていると、2人がまばたきもほとんどせずに対峙しています。そのおかげですごみも増していると思うのですが、どのように演出をしていったのですか?
大友:
ありがとうございます。でも、「まばたきするな」とは言えないですよね(笑)
G:
(笑)
大友:
これは、役者の集中力と努力のたまものだと思いますよ。集中しているからこそ、そういうことが起きるということですね。
G:
なるほど。いよいよ「The Final」公開ということで、6月公開の「The Beginning」とあわせてシリーズのラストを楽しませていただきます。本日はありがとうございました。
映画「るろうに剣心 最終章 The Final」は本日・2021年4月23日(金)から公開。そして「るろうに剣心 最終章 The Beginning」は2021年6月4日(金)公開です。今回、大友監督以外のスタッフの方々にも話を伺う機会があったので、さらなるインタビュー記事を後日掲載予定です。
「#るろうに剣心 最終章」、本日公開となりました。公開日和で空は澄み切っておりますが、嵐の中の、覚悟の船出です。
— KEISHI OTOMO(大友組) (@TeamOTOMO)
エンタメの灯を無くすわけにはいかない!!皆さん、ぜひご覧ください!! pic.twitter.com/VIrKAo9FCy
◆『るろうに剣心 最終章 The Final』作品情報
・キャスト
佐藤健
武井咲
新田真剣佑
青木崇高
蒼井優
伊勢谷友介
土屋太鳳
三浦涼介
音尾琢真
鶴見辰吾
中原丈雄
北村一輝
有村架純
江口洋介
・スタッフ
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督/脚本:大友啓史
音楽:佐藤直紀
主題歌:ONE OK ROCK“Renegades”
製作:映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会
制作プロダクション/配給:ワーナー・ブラザース映画
© 和月伸宏/ 集英社 ©2020 映画「るろうに剣心 最終章 The Final」製作委員会
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