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宇宙空間を漂う「スペースデブリ」を回収する方法はあるのか?


地球の周囲には、人工衛星やロケットの破片である「スペースデブリ」が無数に漂っています。そんなスペースデブリが人工衛星に衝突することで地球での暮らしに大きな影響が出る可能性が指摘されており、スペースデブリを除去するために銛(もり)を用いる方法レーザーキャノンを用いる方法などが検討されています。しかし、科学系メディアのScientific Americanは「スペースデブリの除去は、スムーズに進んでいない」として、地球の周囲を漂うスペースデブリの現状を解説しています。

Space Junk Removal Is Not Going Smoothly - Scientific American
https://www.scientificamerican.com/article/space-junk-removal-is-not-going-smoothly/


宇宙開発が始まって以来数十年間、ロケットの使用済み燃料タンクや活動を停止した人工衛星、壊れた人工衛星、事故によって飛散した人工衛星の破片など、無数のスペースデブリが宇宙空間に放たれてきました。加えて、宇宙開発企業SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」では1万2000基に及ぶ人工衛星の打ち上げが計画され、他にもAmazonやOneWebといった企業の衛星インターネットサービスのために何千もの人工衛星が打ち上げられる予定であることから、Scientific Americanはスペースデブリと人工衛星が衝突するリスクが高まっていると指摘しています。

1970年代には、NASAでスペースデブリに関する研究を行っていたドナルド・ケスラー氏が「ケスラーシンドローム」という「スペースデブリと人工衛星が衝突するリスク」を端的に説明するシミュレーションモデルを発表し、世界に対してスペースデブリの危険性を主張し始めました。その後、このリスクを最小化するために、網・レーザーキャノン・ロボットアームといった、さまざまなスペースデブリの回収方法が検討されてきました。

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◆スペースデブリ除去衛星の開発
実用化が期待されているスペースデブリ除去方法の1つとして、東京に拠点を置くスペースデブリ除去サービスを展開する企業「アストロスケール」が開発するスペースデブリ除去サービス「End-of-Life Services by Astroscale(ELSA)」があります。

アストロスケールはELSAの技術を実証するために、2021年3月22日に、人工衛星「ELSA-d」を打ち上げました。ElSA-dは「捕獲衛星」と「デブリ模擬衛星」を結合した状態で打ち上げられており、宇宙空間で磁力を用いてデブリ模擬衛星の分離・捕獲を繰り返し行うことで、スペースデブリの回収能力を実証しようとしています。


Scientific Americanは「ELSA-dや類似の人工衛星は、スペースデブリを除去するための前向きな開発です」と、実験成功に期待をよせる一方で、「スペースデブリは拡散し続けています。スペースデブリ回収衛星の開発だけでは、問題の解決には不十分です」と述べています。

◆スペースデブリの生成を抑制する
地球を周回する物体に関する分析グループCelesTrakの科学者であるT・S・ケルソ氏は、スペースデブリには大きなロケットの残骸から小さな破片まで多様な大きさの物体が存在しているため、全てのスペースデブリに対応する「万能の解決策」は存在しないと指摘し、「スペースデブリの問題を解決する最善の策は、スペースデブリを生成しないことです」と主張しています。

フリンダース大学でスペースデブリについて研究しているアリス・ゴーマン氏もケルソ氏と同様に、「ナノ粒子から2階建てバスほどの巨大なモノまで、さまざまな大きさのスペースデブリが存在しています。また、金属の塊や紙のように薄い形状の物体など、形状も多岐に渡ります」と述べ、スペースデブリの多様性と回収の複雑さを主張しています。

さらに、ゴーマン氏は「最もリスクの大きいスペースデブリは1~10cm四方の小さな破片です」と指摘。人工衛星はスペースデブリとの衝突を避けるために軌道を修正していますが、小さな破片は軌道を予測しづらく、衝突を避けるのが困難とのことです。


◆市場を創出する
スペースデブリの除去は、宇宙開発を進める上で重要な課題ですが、現時点ではスペースデブリの除去事業を収益化することは困難です。テキサス大学オースティン校でスペースデブリについて研究するモリバ・ジャー氏は、「宇宙には、地球と同様に環境保護が必要です。各国の政府がスペースデブリの除去を産業として成立させるための補助を行うことを望みます」と述べています。

さらにジャー氏は、二酸化炭素の排出量を可視化する「カーボンフットプリント」と同様の仕組みをスペースデブリに当てはめた「スペーストラフィックフットプリント」という概念を提唱し、「国や企業に対して使用可能な宇宙空間を割り当てることで、スペースデブリの除去が積極的に行われ、スペースデブリ除去事業が産業として成立する可能性があります」と主張しています。

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in メモ, Posted by log1o_hf

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