宇宙に漂って問題を起こす「スペースデブリ」除去のためにエアバスは「銛(もり)」を打ち込む方法を開発
壊れて動かなくなった人工衛星や、ロケット打ち上げ時に投棄されたロケットエンジン、そして人為的に破壊された人工衛星の破片など、宇宙空間には宇宙のゴミ「スペースデブリ」が無数に存在し、秒速数kmという超高速で飛びまわり続けています。他の人工衛星や宇宙船の脅威となっているスペースデブリの問題を解決するためにヨーロッパの航空宇宙大手「エアバス」は、スペースデブリを突き刺して回収・大気圏に落下させる「ハープーン」(銛・もり)のような装置を開発しています。
Airbus tests harpoon meant to shoot down satellite-sized space junk
https://www.zmescience.com/science/news-science/space-junk-harpoon-043242/
Big harpoon is 'solution to space junk' - BBC News
http://www.bbc.com/news/science-environment-43418047
エアバスが開発中のハープーンの試作機がコレ。長さ約90cmの本体の先端は鋭くとがらされており、母船から打ち出されたハープーンはターゲットとなる人工衛星などの人工物に突き刺さるようになっています。
このシステムが対象としているのは、動かなくなったり制御不能に陥ったりした人工衛星や、打ち上げに使われたロケットなど大きめのスペースデブリとのこと。先端のとがった部分には、釣り針の「かえし」のような部品が取り付けられており、対象物に打ち込まれた際に内部で広がり、抜けないようになっています。ハープーンの尾部には母船につながるテザー(ロープ)が取り付けられ、母船のロケットエンジンを噴射して対象物を地球の大気圏へと引きずり込み、断熱圧縮による高温で燃やし尽くしてしまいます。
エアバスはこのプロジェクトを過去数年かけて進めてきました。実際に宇宙に打ち上げて使用する実機では火薬などの推進剤が用いられるとのことですが、代わりに圧縮空気を使って発射して動作を検証する様子が公開されています。
この映像はスロー撮影されたもので、実際の速度は秒速25メートルにも達するとのこと。実際のロケットや人工衛星と同等の厚さ3mmの金属板にハープーンを打ち込んでいます。
民間による宇宙開発がさらに活発化するとみられる現在、スペースデブリ問題は今後さらに大きな問題になるとみられています。そのための対策としてさまざまな方法が考えられているのですが、実はスペースデブリ対策は「ビジネス」として成り立つ可能性があります。日本のスタートアップ「アストロスケール」は大小さまざまなスペースデブリを掃除する技術と人工衛星を開発中。近い将来は漫画・アニメ作品「プラネテス」に登場する主人公「ハチマキ」のように、スペースデブリを回収するサラリーマンが誕生するのかもしれません。
JAXA | 民間の力で宇宙をきれいにする ASTROSCALE PTE. LTD. CEO 岡田光信
http://www.jaxa.jp/projects/feature/debris/okada_j.html
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