アルファベットの「ミッシングリンク」を解き明かす古代の碑文が発見される
アルファベットは、ラテン文字やギリシア文字のように、母音や子音を1文字で表す文字体系です。そんなアルファベットのうち、最も古いものは紀元前1900年頃にエジプトで使われ始めたと考えられていますが、新たに、アルファベットの変遷を明かす手がかりとなる紀元前1450年頃に記された碑文がオーストラリア科学アカデミーの研究チームによって発見されました。
Early alphabetic writing in the ancient Near East: the ‘missing link’ from Tel Lachish | Antiquity | Cambridge Core
https://www.cambridge.org/core/journals/antiquity/article/early-alphabetic-writing-in-the-ancient-near-east-the-missing-link-from-tel-lachish/C73F769B7CF3A7E4E2607958A096B7D8
Alphabet's 'missing link' possibly discovered | Live Science
https://www.livescience.com/alphabet-missing-link-israel.html
研究チームによると、初期のアルファベットはエジプトで用いられ始めた後、現在のイスラエルやシリア、レバノンを含む「レバント」と呼ばれる地域へ伝わり、ギリシャやローマへと広がっていったと考えられているとのこと。しかし、エジプトからレバントへアルファベットが伝わった証拠は、これまで発見されていませんでした。
研究チームは、エジプトからレバントへアルファベットが伝わった証拠を見つけるべく、イスラエルの青銅器時代の遺跡「ラキシュ」で発掘調査を実施しました。その結果、文字が記された40mm×35mmほどの大きさの陶器の破片を発掘。この破片の年代を測定したところ、レバントの人々がエジプトを支配したと考えれている紀元前1450年頃に作られた陶器の破片であることが明らかになりました。
紀元前1450年という時代は、エジプトでアルファベットが用いられ始めた時代と、レバントからギリシャやローマはアルファベットが伝わった時代の中間であることから、研究チームは「今回発見した陶器の破片はミッシングリンクとみなすことができます」と述べています。
なお、研究チームによると、破片に記された文字は2行に分かれており、上段の行には右から順にヘブライ文字の「ע(アイン)」「ב(ベート)」「ד(ダレット)」に相当する文字が並んでいるとのこと。「עבד」の3文字を右から読むと「奴隷」を意味する単語になりますが、研究チームはこの3文字は何かしらの単語の一部だと考えています。
また、下段の行には右から順に、「נ(ヌン)」「פ(ペー)」「ת(タヴ)」に相当する文字が並んでおり、「נפת」の3文字を右から読むと「蜂蜜」や「蜜」を表す単語になります。また、逆順にした「תפנ」を右から読むと「曲がる」という動詞になりますが、これらの文字も上段の行と同様に何かしらの単語の一部ではないかと研究チームは推測しています。
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