化粧品の「肌色」に無意識の差別が根付いていることがわかるグラフ
Google Photosが黒人をゴリラと認識したことを始めとし、テクノロジーには見えない偏見がはびこっていると指摘されています。化粧品ブランドのオンラインショッピングサイトにも見えない偏見は存在するとして、化粧品ブランド「Cocoa Swatches」のCEOであるAmber Thomas氏が、その見えない偏見をグラフで可視化しています。
The Naked Truth
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ウェブサイトがインターネット上でアクセスされるかどうかは検索順位に左右されるというのはよく知られた話ですが、それと同様にオンラインショッピングサイトでも上位に表示されるものがアクセスされやすいもの。このため売り手にとって重要なものはウェブサイトの上位に表示される傾向があります。
この考えを前提に、化粧品107ブランドのファンデーション328商品から色見本6816個を抽出し、何色がショッピングサイトの上位に表示されるのかを、Thomas氏とOfunne Amaka氏が調査。この結果、まずアメリカで人気のセフォラとUlta Beautyのウェブサイトで連番表示される130製品のうち、97%が明るい色合いであることが判明しました。また、ベアミネラル・Urban Decay Cosmetics・FENTY BEAUTY by Rihanna・メイベリンという4ブランドのファンデーションも、その多くが明るい色。そして色の連番は明るい色の方が数字が小さいので、ウェブサイトの上位に明るい色合いが優先して表示されるようになっていたとのこと。
以下のように、暗い色の方が連番の数字が小さいブランドは全体の40%でした。
そして、化粧品の名前には色にちなんだ単語が使われることが多いということで、色合いごとに使用単語の偏りがないかも調査されました。例えば「ヌード」という単語が含まれるファンデーションは全部で73製品、110色ありましたが……
色合いごとにグラフにすると、極端に明るい色が多いことがわかります。黒枠で囲まれた色合いが全体の80%を占めるとのこと。
なお、化粧品ブランド全体の分布を緑色の実線、過小評価された顔色のための化粧品ブランド「Cocoa Swatches」の製品分布を灰色の波線で示すと、Cocoa Swatchesの分布がよりなだらかであることがわかります。
しかも、以下の黒枠で囲まれた部分はNUDESTIXというブランドの製品であり、暗い肌色の多くが単にブランド名を冠しているだけというのも事実。
また最も暗い色合いは単に「ヌード」なわけでなく、「ヌード・モカ」という特徴付けがされています。
さらに「ナチュラル(自然)」という単語の場合、より傾向が顕著になります。これは暗い肌色が「自然ではない」「不自然である」という暗黙の偏見を含むとAmaka氏は指摘します。
加えて、暗い肌色には「コーヒー」「ラテ」「エスプレッソ」といった飲み物の名前が付けられることが多く、創造性が欠如していることも指摘されています。明るい色は食べ物や飲み物だけでなく、宝石・植物など、命名の仕方がより多様とのこと。そしてファンデーションの名前には「完璧な」「クラシカルな」といった「褒め言葉」に分類される単語が使用されることもありますが、明るい色に褒め言葉を使うブランドは15個もあるのに対し、暗い色に褒め言葉を使うブランドはたった2つだったことにも、Amaka氏は言及しています。
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